脂肪由来幹細胞

Adipose-Derived Stem Cells

概要

脂肪由来幹細胞を使うと
脂肪の生着率が高くなります。

脂肪由来幹細胞

脂肪由来幹細胞とは何か。その問いにお答えするために、まずは幹細胞について説明をさせて頂きます。幹細胞とは、細胞分裂の際に自身を複製する「自己複製能」と、自身とは異なる様々な細胞に変化する能力である「多分化能」を併せ持つ細胞のことを指します。専門用語でいうと非対称性細胞分裂といいます。逆に、非対称性細胞分裂を行う細胞は全て幹細胞です。私たちの体を構成している各組織にこの幹細胞は存在しており、脂肪や骨、筋肉などを構成する細胞をそれぞれの組織で生み出す役割を果たしています。この特性を利用した再生医療が近年急速に発展しており、幹細胞に関する様々な知見が得られています。

幹細胞の中でも脂肪の中に存在するタイプのものが脂肪由来幹細胞と呼ばれています。ここではこの脂肪由来幹細胞のあれこれから治療方法までをご説明いたします。

幹細胞についてもっと詳しく

脂肪由来幹細胞の機能

生体内、生体外どちらにおいても、脂肪細胞への分化能力が優れていることはもちろん、脂肪組織が減少している部位において、脂肪由来幹細胞はそれを察知し、脂肪細胞を生み出す役割も担っています。

脂肪の減少を感知→脂肪由来幹細胞が脂肪組織に変化→脂肪組織体積の減少を防止

脂肪の減少を感知→脂肪由来幹細胞が脂肪組織に変化→脂肪組織体積の減少を防止

また、脂肪組織は脂肪細胞でそのほとんどの体積を埋められていますがその間隙には血管が通っています。この血管によって栄養と酸素が脂肪細胞に供給され、機能維持の役割を果たしているのですが、脂肪由来幹細胞は周りの状況に応じて血管にも変化することができ、例えば移植治療の際、この機能のおかげで生着率が向上することがわかっています。

幹細胞がある場合、幹細胞が血管の作成をを促し、栄養と酸素が送られるようになる。幹細胞がない場合、栄養が行き渡らないため生着が安定せず、しこりの原因となる可能性がある。

幹細胞がある場合、幹細胞が血管の作成をを促し、栄養と酸素が送られるようになる。

幹細胞がない場合、栄養が行き渡らないため生着が安定せず、しこりの原因となる可能性がある。

その他にも幹細胞には痛みや腫れを抑えるような抗炎症作用を持つことも報告されており、臨床応用に向けて、日々研究が盛んに行われています。

脂肪由来幹細胞治療の流れ

ステップ1 
脂肪組織の抽出

脂肪由来幹細胞を用いた治療において、1つ目のステップが脂肪由来幹細胞を含む脂肪組織の抽出になります。治療が認められている医療機関にてご自身のお腹や太もも、おしりなどから約1~3グラム程(小指の先程)の皮下脂肪組織を採取します。抽出の際は局所麻酔を行い、傷口が大きく目立たないように専用の針あるいはメスで組織採取を完了します。ご自身の治療に必要な脂肪量にあわせて脂肪吸引の選択肢もあり、この際にも専用の針が使用され、基本的に傷口が目立つことはありません。

ステップ2 
脂肪由来幹細胞の培養

ステップ1から数週間後(細胞培養期間)ステップ1で採取した脂肪組織から脂肪由来幹細胞のみを回収し、国から認可された細胞培養施設にて幹細胞は無菌環境下で培養されます。培養後の幹細胞の数は約1,000倍にも上る可能性があります。また培養が完了した幹細胞は凍結保管が可能となっており、患者様のご都合の良いタイミングで治療を進めることができます

脂肪吸引→増やした幹細胞を注入すると脂肪と混合→脂肪注入:幹細胞密度の高い脂肪を注入できる

脂肪吸引

増やした幹細胞を注入すると脂肪と混合

脂肪注入:幹細胞密度の高い脂肪を注入できる

ステップ3 
患部への脂肪注入

細胞培養センターにて適切に活性化・増幅された脂肪由来幹細胞を移植・注入するステップです。移植・注入の前にもう一度、患者様から脂肪組織を抽出し、培養した幹細胞と混ぜた後に注入します。これにより幹細胞密度の高い脂肪を体内に移植できるため、その後の生着率が高くなる効果があります。

ひざに脂肪由来幹細胞を注入する図

ひざに脂肪由来幹細胞を注入する図

豊胸

シリコンパック移植やヒアルロン酸注入などの従来の治療法では移植後の異物生体反応や持続効果の低さなどの問題点があります。これに対して、脂肪再生医療による豊胸では自分自身の脂肪組織の注入による異物生体反応のリスクの解消や注入した脂肪の生着率の高さによる豊かかつ自然な仕上がりのバストの長期間持続が可能となっています。また自身の脂肪由来幹細胞を少量抽出し、培養して移植を行うので、やせ型の方でも治療が可能である点や高い安全性も評価され、新しい治療法の選択肢として急速に認知が広がっています。

胸の再生医療

変形性膝関節症治療

従来の手術以外の治療法では痛みの緩和を目的としたヒアルロン酸の患部への注入などが行われていますが、病気の根本治療ではなく、1回のヒアルロン酸注入の効果持続期間は約1ヶ月以下であることや繰り返しの注入で痛みの軽減効果が徐々に減少していくという問題点があります。状態の悪化が続いた際には人工関節置換手術のフェーズに入り、本格的な入院が必要になってしまうことに加え、手術後には血栓症や感染症などの発生懸念、また、関節が曲がりにくくなることにより、運動に制限がかかってしまうなどの負担が伴います。しかし、脂肪由来性幹細胞による再生医療を取り入れることによって人工関節置換手術を受けざるを得ない重症化を回避できる可能性があります。脂肪由来幹細胞は軟骨への分化も可能であり、幹細胞を膝関節に移植する治療法によって、上記でも挙げた異物生体反応のリスク軽減に加え、すり減った軟骨の再生による痛みの軽減が見込め、移植後に適切なリハビリを行うことで悪化する前の正常な状態に近づける可能性があります。

上記の他にも脂肪由来幹細胞を用いたリウマチ治療や脊髄損傷治療など様々な病気に対しての再生医療が発展しています。

ひざの再生医療

脂肪由来幹細胞治療の
メリット・デメリット

メリット

① 高い安全性

用いる細胞は全てご自身の細胞であるため、基本的に異物反応の心配がありません。また従来の移植治療において幹細胞が低濃度の脂肪注入では細胞が上手く生着せず、「しこり」の発生などの問題点がありましたが、幹細胞が高濃度の脂肪注入が現代では可能になっているため、そのようなリスクも大幅に削減されています。

② 治療負担の軽減

抽出する脂肪が少量であるため、患者様の負担が軽減されることに加え、注入後も傷口が目立たないという特徴があります。

③ やせ型の方でも治療可能

豊胸の場合など、患部の組織と採取の組織が異なるのでやせ型の方でも治療が可能となっています。

デメリット

① 費用

自由診療ゆえ、費用が各医療機関で異なり、トータルで100万円以上かかることが多いのが現状です。

② 発展途上の治療法

比較的新しい治療法であるため、レポートが十分にあるとは言い切れない分野になっています。生体異物反応や、移植後の細胞壊死による変形などの深刻な報告は見受けられませんが、治療後何十年後のリスクがゼロとは言い切れません。治療をご検討の際にはセカンドオピニオンを含む医師の確認を適切に受け、概要を把握した上で処置を受けてください。

変形性膝関節症治療の項目で脂肪由来幹細胞が軟骨に分化すると述べたように、脂肪由来幹細胞という名前ではありますが、この細胞は各組織において骨や筋肉、神経細胞にまで分化することが報告されています。

脂肪由来幹細胞から脂肪細胞、ニューロン系統、ベータ膵島細胞、内皮細胞、幹細胞、角化細胞、筋組織、骨芽細胞、軟骨組織へ分化する図

脂肪由来幹細胞から脂肪細胞、ニューロン系統、ベータ膵島細胞、内皮細胞、幹細胞、角化細胞、筋組織、骨芽細胞、軟骨組織へ分化する図

再生医療は世界レベルで発展する予想が立てられており、それに伴って医療機関は適切な体制を整えていかなければなりません。幹細胞治療を希望する方々に適切な処置を受けられるよう、今後も再生医療の需要は益々高まっていくものと言えるでしょう。

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