ひざの痛みについて

保田医師

この先生が監修しました

保田 真吾 先生

膝の痛み専門 大阪梅田セルクリニック 院長。京都大学医学博士。

変形性膝関節症の症例を数多く経験。
「和顔愛語 先意承問」の精神で、丁寧な診察を心がけている。

膝の痛み専門 大阪梅田セルクリニック

Contents
  1. 多くの人が抱えるひざの痛み
  2. ひざのしくみ
  3. 治療が必要ない痛みはない
    1. 膝に水がたまる
  4. 様々な痛み
    1. 膝の痛みにも様々な症例がある
    2. 代表的な膝の痛みの疾患
  5. 診断が難しい場合も

多くの人が抱える膝の痛み

膝痛を患っている60歳以上は約3,000万人、日本人の全人口の4人に1人!

厚生労働省の発表によると、60歳以上で膝痛を患っている人数は約3,000万人と推定されており、これは日本人の全人口の4人に1人にあたります。
また、60代、70代の2人に1人が膝の痛みを抱えており、40代でも約4割が膝の痛みを感じている、という調査結果※1)があります。

シニア世代の2人に1人が膝痛を抱え、その中の約3割が老化現象として受け入れ、膝痛改善を諦めているため特別な対策は何もしていないというのです。
高齢化に伴い、介護を必要とせずに生活できる「健康寿命」と「平均寿命」に大きな差が生じています。この、健康寿命と平均寿命とのギャップは、QOL(Quality Of Life/生活の質)の維持や向上という点において、今後の日本において重要な課題となっています。

シニア世代の2人に1人が膝痛!その約3割が老化現象

シニア世代の2人に1人が抱えているという"膝の痛み"。
膝痛があると、身体の動きは制限され、日常生活にも支障をきたします。さらには、自立して活き活きと生活を送ることができる健康寿命をも縮めることになってしまいます。
人生の最後まで痛みなく自分らしい生活を送るためには、膝の痛みの原因とその治療について、正しい知識を持つことが大切です。

ひざのしくみ

立ったり、座ったり、歩いたり、走ったり。
様々な姿勢や動作をすることができるのは「膝」のおかげです。膝は、私たちの体重を支え、地面からの足への衝撃を吸収するなど、体を安定させたり、関節内で起こる摩擦や衝撃のダメージを減らすための優れた機能が備わっています。膝関節は、歩くときには体重の約3倍、階段の昇り降りでは約7倍もの重さを支えています。

立って歩くために必要な足には、股関節、膝関節、足関節などの関節があります。膝関節はこの中で最も大きな関節です。その動 きはとても複雑で、力を吸収するクッションのような役割や、筋肉の力を伝える滑車のような役割があります。そのため、膝関節は最も疾患がおこりやすい関節でもあります。

膝の構造イメージ

膝関節は、太ももの骨の大腿骨(だいたいこつ)、すねの骨の脛骨(けいこつ)、膝のお皿の膝蓋骨(しつがいこつ)の3つの骨と、靱帯(じんたい)、軟骨(なんこつ)、半月板(はんげつばん:三日月の形をしており、衝撃を吸収するクッションの役割をする)でできています。骨同士をつなぐ靱帯は、膝の前後左右の動きを支えて膝を安定させています。骨同士が接する面は、軟骨と呼ばれる水分の多いクッションのようなもので覆われており、ツルツルしていて関節が滑らかに動くようにできています。
この関節を覆っている軟骨は、硝子軟骨(しょうしなんこつ)といい、厚さ2~4mmほどです。

硝子軟骨は、軟骨細胞やコラーゲン線維などで構成されており、約80%が水分です。この水分が、クッションの役割や関節の動きを滑らかにする役割を果たしています。
また、膝関節は関節包という袋に包まれ、その中は関節液と呼ばれる液体で満たされています。関節液は、軟骨の表面を覆う液体で、滑膜(関節包の内面の滑膜細胞でできた膜)内の血管から沁み出た酸素や養分を含んだ血漿と、滑膜細胞が分泌したヒアルロン酸でできています。血管のない軟骨では、関節液中の酸素や栄養分が、軟骨基質に浸み込み、軟骨細胞にたどりつきます。また、関節液は潤滑液として関節の摩擦力を極めて小さくし、軟骨を保護すると同時に、軟骨に酸素や栄養を与えています。

治療が必要ない痛みはない

膝の痛みを伴う場合はどんな時も治療が必要です。「治療が必要ない痛み」はありません。ひざの痛みは程度によってはストレッチや、簡単なリハビリで良くなる痛みもありますが、適切な治療をしないと慢性的な痛みになります。どんなに若くてまだ膝が丈夫そうに見えたとしても、膝に痛みがあるようでしたら、専門家から治療を受けることが大切です。

膝に水がたまる

膝に水がたまるのは、痛みを我慢している時に起こりやすい現象です。膝に炎症があり、水(関節液)が溜まっているという状態で、関節水症(関節水腫)と言います。本来、ひざの関節液は軟骨や半月板に栄養を与えたり、膝の関節の動きをスムーズにする役割があります。しかし、膝の滑膜という部分が炎症を起こすと滑膜から大量の水(関節液)が出てきます。そして膝関節に水(関節液)が水風船のようにパンパンに溜まり、膝の曲げ伸ばしが出来にくくなり、だるさを感じたりします。医療機関で水抜きなどの処置を受けることも出来ますが、膝関節の炎症が治らない限り、水がすぐに溜まってしまいます。

様々な痛み

膝の痛みにも様々な症例がある

膝の痛みで最も多いのは変形性膝関節症ですが、他にも様々な疾患があります。変形性膝関節症以外にも、半月板の損傷、腱・靭帯損傷、骨壊死、痛風、偽痛風、関節リウマチ、化膿性関節炎、膠原病など、膝の痛みの疾患はとても多いです。

代表的な膝の痛みの疾患

変形性膝関節症

現在、厚生労働省で国内で潜在的な患者数を入れると約3000万人の患者がいるといわれているのが「変形性膝関節症」です。

変形性膝関節症は、加齢と共に関節軟骨が徐々にすり減っていく疾患です。
発病率は高齢になるほど上がります。50歳以降の男女比(患者割合)では、女性のほうが男性よりも1.5倍~2倍多いことがわかっています。

変形性膝関節症とは

関節リウマチ

自己免疫疾患で代表的な膠原病の一つです。自己の免疫力が自分自身の体の一部を誤って外敵とみなして攻撃してしまう病気です。リウマチになると膝だけでなく全身の関節に炎症が起き、関節のこわばり、腫れ、発熱などを引き起こし、軟骨や骨の破壊が進みます。

痛風・偽痛風

痛風は食べ過ぎや運動不足、生活習慣の乱れによって、血液中の尿酸値(プリン体が分解されて生じる物質)が上がり、膝や足の関節の隙間に結晶化し、沈着していきます。関節に尿酸が結晶が沈着している時は症状は現れませんが、結晶がはがれ落ちるときに痛風関節炎が起きて激しい痛みを引き起こします。

偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が膝の関節に沈着し、はがれ落ちることで炎症が起きる疾患です。偽痛風は変形性膝関節症と合併して起こることもあります。

化膿性関節炎

関節内に細菌が入り込み、軟骨や骨を破壊する病気です。菌としては黄色ブドウ球菌が多く、怪我の傷口から感染することが多いです。化膿性関節炎で破壊された関節は元に戻らないため、緊急性が高い病気であり早期の治療が重要です。治療は抗生物質を使用しますが抗生物質の投与が遅れると、痛みが残ったり関節が不安定になることもあります。

半月板損傷

半月板は膝にある軟骨で、半月板に亀裂が入ったり切れてしまうことで、膝に痛みが出たり膝の曲げ伸ばしが難しくなってしまう疾患です。症状がひどい時には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなったり、歩けなくなるほど痛みを伴うこともあります。治療では抗炎症薬やリハビリで痛みの改善を試みますが、改善しない場合は手術で半月板を縫合したり切除することも必要となります。スポーツの怪我などによる半月板損傷は若い世代の人が多く発症します。中高年の人の場合は、加齢によって半月板が損傷していることが多いです。

膝靭帯損傷

膝関節を支える4本の主な靭帯(側副靭帯や十字靭帯)のうち1本でもダメージを受けている状況で、動かせる範囲に制限がかかったり、痛みや血種が出てくる病気です。主にスポーツによる怪我で生じて、靭帯が切れてしまった場合と部分的にまだ繋がっている場合もあります。

診断が難しい場合も

膝の疾患は、膝の痛みがあるという共通点はありますが、一般的なクリニックで検査項目が少ないと、診断に迷うこともあり、正確な診断を出すことが難しい場合があります。例えば、MRIでは痛風とか偽痛風など結晶性の疾患は見えにくいことがありますし、初期のリウマチと変形性膝関節症との鑑別が難しいこともあります。変形性膝関節症がある所に初期のリウマチが現れて、この痛みはリウマチの痛みなのか、それとも変形性膝関節の痛みなのか、鑑別するのが専門家でも容易でないこともあるのです。そのような時は、レントゲンが診断に役に立ったり、CTを撮ってみたり、関節液を抜いて見てみたりなど、プラスアルファの検査が必要になることもあります。正確な診断を出すためには、詳細な病歴を聞いたり、身体所見を取って、血液検査を併用したり、MRIを撮るなど、精密に検査することが大切となります。

参考

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