変形性膝関節症に対する再生医療

変形性膝関節症の治療におけるPRP(多血小板血漿)療法

PRP療法は自己治癒力を活かした治療法で、再生医療の一つだと考えられています。膝に打つことによって血流の改善や、炎症の緩和にともなう痛みの軽減、組織の修復に効果が期待できます。

保田医師

この先生が監修しました

保田 真吾 先生

膝の痛み専門 大阪梅田セルクリニック 院長。京都大学医学博士。

変形性膝関節症の症例を数多く経験。
「和顔愛語 先意承問」の精神で、丁寧な診察を心がけている。

膝の痛み専門 大阪梅田セルクリニック

Contents
  1. PRP療法について
  2. 変形性膝関節症に対するPRP療法での治療
  3. その他のPRP療法が可能な部位・症状
  4. PRP療法のメリットとデメリット

PRP療法について

怪我をすると、時間の経過とともに傷口が塞がり、カサブタができ、やがて治る…という“傷が治る”という、この一連の過程を『創傷治癒』と言います。創傷治癒には、血液の中に含まれる「血小板」が重要な役割を果たしています。

血液1mm3当りに10~40万個含まれている血小板は、血管が損傷すると、その場所に集まって止血をします。その際、組織を修復させる働きをする“成長因子”を大量に放出します。

血小板が放出する成長因子には、細胞の増殖や血管の形成などに関するものが数種類あります。これらが損傷部位に直接働きかけ、細胞の増殖を促進し、修復機能を高めます。

そのため、血小板が少ないと血が止まりにくく、傷の治りも遅くなります。

また、打撲や捻挫の場合は、怪我をした部分が腫れることがありますが、この腫れは皮膚の下で出血したことによるものです。打撲や捻挫でも、皮膚を切った時と同じように、血小板から傷んだ組織の修復を促進する成長因子が放出され、傷んだ組織を元通りに直そうとします。

PRP(多血小板血漿)療法とは

血小板の作用により怪我を治す人間に本来備わっている力が自然治癒力です。

この“自分で自分を治す力(自己治癒力)“をサポートする治療法として、ヨーロッパやアメリカで頻繁に行われている治療法が「PRP療法」です。

PRP療法は、自分の血液中に含まれる血小板の成長因子が持つ組織修復能力を利用し、本来備わっている「治る力」を高め、治癒を目指す再生医療のひとつです。

PRP療法では、特殊な技術を用いて、自分の血液から血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出し、「自己PRP」を作成します。成長因子が豊富に含まれている「自己PRP」を、身体の傷んだ部分に注射することにより、その部分の組織の修復が促進され、“早期治癒“や“疼痛の軽減”効果をもたらします。

PRP(多血小板血漿)とは

PRPとは、Platelet-Rich Plasmaを略した名称です。

日本語では“多血小板血漿”と呼ばれており、血小板を濃縮したものを指します。

PRP療法の治療の流れ

  • 血液を採取

  • 多血小板から血漿(PRP)を抽出

  • 血漿(PRP)を患部に注入

変形性膝関節症に対するPRP療法での治療

PRP療法は今の変形性関節症によく用いられている治療法のひとつです。変形性関節症に対し、一定の効果があるという報告がいくつもあります。

変形性膝関節症に対するPRP療法での治療は、幹細胞を用いたひざの再生医療と併用して行なうことも可能です。

PRP療法での変形性膝関節症治療の効果

変形性関節症では、症状の進行に伴い、軟骨のすり減り、半月板の損傷、炎症が起きて膝に水が溜まったりします。PRPは、こうした組織の修復を促したり、関節の炎症を抑制したりする効果が期待できます。

これまでは、変形性関節症の方に対する治療法としては、①痛み止めの内服や②ヒアルロン酸の注射などでしたが、こうした既存の治療でもあまり効果が感じられなかった場合、③PRP療法での治療により痛みが改善される可能性があることが分かっています。

PRP療法は靭帯・腱にも適応

PRP療法は靭帯・腱にも適応します。

2000年以降、サッカー選手、メジャーリーガーやプロゴルファーの筋肉・靭帯などの組織修復を主とした治療にPRP療法が使われるようになりました。日本でも、数年遅れて整形外科分野において、スポーツ障害による肘やひざの痛み、腱や筋肉の損傷などで注目を浴びています。

PRP療法での変形性膝関節症治療の経過

PRP療法で血漿(PRP)を患部に注入すると、注入した部位の細胞が増殖したり、組織が新しく作られてきます。軟骨に変わるような組織ができてきて、それにより滑らかに動くようになるという効果のイメージです。

治療の効果の表れ方には個人差がありますが、反応痛と言われる膝の腫れや痛みが生じることがあります。症状は様々で、腫れだけで治まることもあれば、疼痛を伴うこともあります。通常は数日から1週間で症状が改善します。

早い人で治療後1週間、通常は2~3週間ほどで効果を実感し始めます。治療後1ヶ月が経過すると、痛みが消え、つらい症状の改善が実感できます。スポーツをされていた方は再開が可能です。

PRP療法での変形性膝関節症治療の費用相場

PRP療法は、日本ではまだ保険診療として認められていないため、全て自由診療となっています。
費用は医療機関・クリニックによって異なりますが、おおよそ片膝1回につき30,000円前後~としている医療機関・クリニックが多く、3~5回を1クールとして行なうことが一般的なようです。

その他のPRP療法が可能な部位・症状

  • 膝の痛み
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 頚椎神経根症
  • スポーツ外傷・障害
  • 慢性腰痛症
  • 肩腱板断裂

PRP療法のメリットとデメリット

メリット

  • ・自己組織由来のためアレルギーなどの副作用が起こりにくい
  • ・日帰りでの処置が可能
  • ・治療後から普段の生活が可能
  • ・治療手技が簡単で、治療痕が残りにくい
  • ・何度でも受けることができる
  • ・どの進行のタイミングでも受けることができる

デメリット

  • ・効果に個人差がある
    (血小板の活性が高い/低いなどの因子が効果に影響を及ぼす可能性がある)
  • ・膝の変形が重症な場合(関節の隙間が無くなっている)や肥満では効果が低下する
  • ・公的医療保険の適用外

PRP療法を受けることができない方

  • がん治療中の方
  • 治療部位に感染を起こしている方
  • 発熱がある方
  • 薬剤過敏症の方
  • 免疫抑制剤を飲んでいる方
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