きっかけは以前勤務していたスポーツクリニックでの経験です。そこではPRP(多血小板血漿)療法などを取り入れており、ある中高年の女性患者さんにPRPを提供したところ、膝の腫れや水がたまるといった症状が劇的に改善されました。そのときに「これはすごいな」と。これまでの既存の治療ではなかなか改善できないところにまでアプローチできたケースだっただけに、再生医療の持つ可能性に強く惹かれました。
もちろん、保険診療の中でもできることはたくさんありますが、手術を望まない方や、家庭の事情で入院が難しい方など、多様なニーズに応える必要があると感じています。たとえば、ご家族の介護のために入院はできないという方も少なくありません。そうした中で、手術以外の選択肢として再生医療を提示できることは、患者さんにとっても医師にとっても大きな意味があります。

また、再生医療の魅力は、保険診療だけでは対応しきれなかった患者さんに対して、新たな選択肢を提供できる点にあると感じています。これまで保険の範囲内では十分な効果が得られず、治療に限界を感じるケースも少なくありませんでした。そういった「空白の部分」を埋める可能性があるのが、再生医療だと思っています。
再生医療の多くは、自身の血液や脂肪組織から成分を抽出して用いるため、安全性が高いのも特徴の一つです。拒否反応のリスクも少なく、治療後も自然な回復を促す形で進んでいきます。一時的に炎症が起こることはありますが、その後の改善は長期的に続くことが多く、これは従来の治療にはない利点です。
例えば、ヒアルロン酸注射では2週間から1か月に一度の通院が必要でしたが、再生医療では半年から1年ほど効果が持続するケースもあり、一時的な緩和ではなく、根本的な改善を目指せる点が再生医療の大きな魅力だと考えています。
提供できる治療の選択肢を広げることは、医師としての大切な役割の一つだと考えています。患者さん一人ひとりの事情に寄り添い、最適な治療を提案できるよう、今後も幅広い知識と技術を学んでいきたいと思います。