豊胸コラム

脂肪由来幹細胞を用いた豊胸の特徴と種類【医師執筆】

代表的な脂肪由来幹細胞の豊胸の種類、特徴と比較を北條医師が解説します。

北條医師

この先生が執筆しました

北條 元治 先生

株式会社セルバンク代表取締役。東海大学医学部客員教授。
信州大学附属病院勤務を経てペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。
2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンクを設立。2005年、RDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。
著書に『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』・『美肌のために必要なこと』他多数。

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脂肪由来幹細胞 の豊胸手術にも種類が色々あるのはご存じでしょうか。

代表的な脂肪由来幹細胞を含む豊胸術ですと、以下があります。

  • ・セリューション
  • ・プレミアムセリューション
  • ・CAL
  • ・セルチャー
  • ・セルバンクの脂肪由来幹細胞

様々なクリニックで脂肪由来幹細胞の豊胸手術が行われていますが、何がどう違うのか、混乱しやすいのも事実。

脂肪由来幹細胞を用いた豊胸手術に焦点を当てて、それぞれの特徴と違い見てみましょう。

Contents
  1. 幹細胞って?
  2. 脂肪幹細胞の役割
  3. 脂肪由来幹細胞の豊胸とは
  4. 脂肪由来幹細胞を含む豊胸のメリット
  5. 脂肪幹細胞を含む豊胸の種類
  6. 脂肪由来幹細胞を含む豊胸術の比較
  7. どれが一番脂肪由来幹細胞が多い?
  8. 総合的な脂肪由来幹細胞の数の比較
  9. 脂肪由来幹細胞のまとめ

幹細胞って?

まずは、脂肪由来幹細胞の豊胸手術のおさらいです。

人の身体には幹細胞という特殊な機能を持つ細胞があります。

幹細胞には、体の組織を保つために細胞分裂を繰り返して自分自身と同じ細胞を作るコピー能力と、別の種類の細胞に変化(分化)する能力があります。

幹細胞の働き

幹細胞が大切な理由

なぜ幹細胞が大切かというと、幹細胞の役割が体内で不足しているもの・必要なものを補ってくれる、そんな潜在能力があるからです。

豊胸で活用される脂肪由来幹細胞ならば、乳房の中で脂肪細胞が生着するために必要な栄養や酸素を運ぶ血管を作ることを促す働きをしてくれます。

生まれてから、どんどん失われていく幹細胞

細胞には寿命があります。

幹細胞は、人間の身体に欠かせないものですが、身体の中の再生能力は年をとると、どんどん失われていきます。

それは、幹細胞の数が関係しているのです。

生まれたばかりの新生児が持っている幹細胞の数を100としたら、0歳~10代で20以下まで下がります。

年を取ればとるほど、体の中の幹細胞は失われていくのです。

また、それと伴って幹細胞の再生能力も衰えていきます。

80代になると幹細胞の数は0.005%に減少

脂肪幹細胞の役割

豊胸手術で活用される脂肪由来幹細胞は、元々人の身体の脂肪に含まれている幹細胞です。

女性のバストは、ほとんど脂肪組織で出来ているので、脂肪由来幹細胞が豊胸や乳房再建などの医療や美容手術に活用されています。

脂肪幹細胞の役割

脂肪由来幹細胞の豊胸とは

脂肪注入の定着率の低さを克服するために生まれたのが、再生医療から生まれた脂肪由来幹細胞を含む脂肪(細胞)注入の豊胸術です。

脂肪由来幹細胞を含む脂肪注入の豊胸は、脂肪注入と比較して定着率が高いのが特徴です。

患者自身の組織を使ってバストアップ出来るという再生医療を駆使した脂肪注入の進化版ともいえるでしょう。

ナチュラルで永続的なバストアップを希望している人には特におススメ出来る豊胸術です。

これまでの脂肪注入との違い

従来の脂肪(細胞)注入では脂肪細胞の定着率が高くないので「豊胸後に時間と共にバストが小さくなっていく」という現象が起こります。

しかし、脂肪幹細胞を含む脂肪注入ですと、定着率が良いので豊胸手術後もバストが小さくなりにくくなります。

これまでの脂肪注入と内容は、似ているように見えるかもしれませんが、脂肪幹細胞が増えることで、豊胸後のバストの持ちが違います。

実際、脂肪注入に比べ、生着量が従来の5倍になったという論文もあります。

脂肪幹細胞を含む豊胸の生着量は脂肪注入の約5倍!

これまで脂肪注入豊胸で一番のデメリットだった『注入した脂肪が体内に吸収されてしまう』ことを克服するために開発されたのが、脂肪幹細胞を含む脂肪(細胞)注入の豊胸手術です。

脂肪由来幹細胞を含む豊胸のメリット

脂肪幹細胞を豊胸手術に追加することで、以下のメリットが見込めます。

  • 幹細胞を多く含むので移植後の持続効果が良い。定着した脂肪は半永久的に持続する
  • 自分自身の幹細胞と脂肪のみを移植するので安全
  • 全身から脂肪を採取できるので、自分で余分な脂肪箇所(お腹や太ももなど)を選べることが出来る
  • 注入した脂肪細胞と幹細胞が自分自身の身体の組織になるので、柔らかく自然な仕上がりになる
  • 幹細胞による細胞活性化作用により、コラーゲンや毛細血管の新生が促進されるので、へこみや肌質が改善される
  • 幹細胞を含むので、脂肪塊などのしこりや細胞壊死などのリスクが極め低い
  • 痩せればバストも痩せ、太ればバストも太り、加齢と共に自然な経過になる

脂肪幹細胞を含む豊胸の種類

現在様々なクリニックで脂肪由来幹細胞の豊胸手術が行われています。

同じ「脂肪幹細胞」という名の中でも、手術の中身は異なります。

違いを見てみましょう。

大きな違いは脂肪吸引で採取した脂肪細胞の加工方法

非培養か培養か

脂肪幹細胞の豊胸手術は大まかに分けて2通りあります。

簡単にいうと、幹細胞を培養するタイプか、しないタイプか、です。

脂肪由来幹細胞の豊胸の種類

幹細胞を混ぜるタイプ(非培養抽出)

体内の脂肪幹細胞を採取して混ぜて胸に注入する

幹細胞を増やすタイプ(培養)

体内の脂肪幹細胞を採取して幹細胞を培養した後に胸に注入

非培養タイプ - 脂肪幹細胞

非培養タイプの脂肪幹細胞の豊胸術には、以下が主流です。

CAL(Cell Assisted Lipostransfer)

CALは、患者自身の幹細胞を活用した脂肪(細胞)注入の豊胸術です。

採取した脂肪の一部を遠心分離機にかけて幹細胞の分離させ、残りの脂肪細胞と混ぜ合わせて脂肪幹細胞の濃度を高めます。

脂肪加工の中で、脂肪層だけでなく破棄する液層からも幹細胞を抽出することが出来るのがCALの特徴です。

幹細胞の分離には、コラゲナーゼという特殊な酵素を用います。

1回の手術の代わりに、4~5時間と時間は長いです。

セリューション(脂肪幹細胞自動抽出器)

セリューションもCALと同じく、患者自身の幹細胞を抽出する方法です。

CALと大きく違うのは幹細胞を抽出するのは自動抽出器であること。

セリューションというのは機械の名前です。(CALでは手作業(マニュアル)の工程があります。)

短時間で一定の幹細胞を確保することが出来、「幹細胞の質を上げて」胸に注入します。

幹細胞の分離にはコラゲナーゼという特殊な酵素が必要で、植物性由来の酵素を使用しています。

論文によると、抽出できる幹細胞の数は24万1000個。

手術は1度で出来ますが、4~5時間と時間は長いです。

プレミアムセリューション(脂肪幹細胞自動抽出器)

プレミアムセリューションは、セリューションの進化版です。

抽出した幹細胞に更に成長因子(FGF)を加えることで生着率アップを図ります。

1回の手術の代わりに、4~5時間と時間は長いです。

共通点

CAL、セリューション、プレミアムセリューションは、脂肪吸引で採取した脂肪から脂肪幹細胞を取るタイプです。

共通点は採取した幹細胞を分離させるということ。

一度幹細胞を分離させまた脂肪細胞に混ぜることで、幹細胞の密度を上げてバストの定着率の向上を図ります。

簡単に言うと、太ももやお腹など、身体の他の組織から取り出した幹細胞を集めてバスト用の脂肪細胞に混ぜてバストに注入する、というような流れです。

総合的な幹細胞の数は増えないので、少ないです。

培養タイプ

培養タイプの脂肪由来幹細胞の豊胸術を見てみましょう。

培養型ですと、セルチャーとセルバンクの脂肪由来幹細胞が主にあります。

セルチャー

ごく少量の脂肪(20~40cc)を採取してその中の脂肪由来幹細胞を培養して増やす方法です。

脂肪由来幹細胞の培養に4週間ほどかけ200~300倍に培養します。

両胸で500万個ほどの幹細胞を増やすことが出来ます。

CALやセリューションに比べ手術時間が短いので、体の負担が少ないのも特徴です。

セルバンクの脂肪由来幹細胞

セルチャーと同じく、消しゴムの大きさくらいの少量の脂肪(20cc)を採取して6週間かけて1000倍に培養。

一回の施術で両胸に1億個の脂肪由来幹細胞を注入可能で、幹細胞の密度が非常に高いのが特徴です。

また、治療の回数は2~3回とありますが、一回の治療は1.5時間~2時間と短いので体の負担が少ないです。

セルチャーもセルバンクの脂肪由来幹細胞も培養して脂肪由来幹細胞を増やすので、脂肪由来幹細胞の量が圧倒的に増えるというのがメリットといえますが、大きな違いは培養して胸に注入出来る幹細胞の数でしょう。

セルバンクの脂肪由来幹細胞は、両胸で1億個とセルチャーの約20倍の量の脂肪由来幹細胞を注入することが出来ます。

脂肪由来幹細胞を含む豊胸術の比較

非培養タイプ

CA(Cell Assisted
Lipostransfer)
(非培養)
セリューション
(非培養)
プレミアムセリューション
(非培養)
概要 採取した脂肪の一部を遠心分離機にかけて幹細胞の分離させ、残りの脂肪細胞と混ぜ合わせて脂肪由来幹細胞の濃度を高める。脂肪層だけでなく破棄する液層からも幹細胞を抽出することが出来る セリューションという自動抽出器で短時間で一定の幹細胞を確保して、「幹細胞の質を上げて」胸に注入する セリューションの進化版。抽出した幹細胞に更に成長因子(FGF)を加えることで生着率アップを図る。
幹細胞の数 自分自身の組織から幹細胞を分離して胸に注入しているので、幹細胞の量は少ない。 自分自身の組織から幹細胞を分離して胸に注入しているので、幹細胞の量は少ない。 自分自身の組織から幹細胞を分離して胸に注入しているので、幹細胞の量は少ない。
メリット 一回の手術で終わる。 一回の手術で終わる。 一回の手術で終わる。
デメリット 採取の際に多くの脂肪の量が必要。やせている人は十分な脂肪をとれないので不向き。 採取の際に多くの脂肪の量が必要。やせている人は十分な脂肪をとれないので不向き。手術は4~5時間。 採取の際に多くの脂肪の量が必要。やせている人は十分な脂肪をとれないので不向き。手術は4~5時間。

培養タイプ

セルチャー(培養) セルバンクの脂肪由来幹細胞
(培養)
概要 少量の脂肪(20~40cc)を採取してその中の脂肪由来幹細胞を培養して増やす方法。脂肪由来幹細胞の培養に4週間ほどかけ200~300倍に培養 少量の脂肪(20~40cc)を採取してその中の脂肪由来幹細胞を培養して増やす方法。脂肪幹細胞の培養に4~6週間ほどかけ1000倍に培養
幹細胞の数 20mlの脂肪から「幹細胞」のみ約500万~1000万個培養。幹細胞の数は採取時の200~300倍になる。 両胸に合計1億個の脂肪由来幹細胞が注入可能で幹細胞の密度が非常に高い。幹細胞の数は採取時の1000倍になる。
メリット 1回の手術で終わる。痩せ型でも手術可能。培養することで手術の時間を短縮。 1回の手術で終わる。痩せ型でも手術可能。培養することで手術の時間を短縮。
デメリット 最低2回の通院が必要。培養に4週間要する。 最低2回の通院が必要。培養に4週間要する。

どれが一番脂肪由来幹細胞が多い?

CAL、セルーション、セルチャー、セルバンクの脂肪由来幹細胞と、それぞれ「脂肪由来幹細胞」を含む豊胸術でも施術の違いが見えてきたと思います。

培養タイプのほうが非培養タイプより 脂肪由来幹細胞 が多い

結論から言うと、培養した脂肪由来幹細胞(セルチャー、セルバンクの脂肪由来幹細胞)が圧倒的に非培養よりも多いです。

実際に幹細胞の数にどれだけの違いがあるか、見てみましょう。

まずは、実際の幹細胞の数を視覚化してみましょう。

培養することで、たった1つの脂肪由来幹細胞がどれだけ増えることが出来るか、脂肪由来幹細胞の培養率を見てみましょう。

以下が、培養率の結果です。

セルチャー

セルチャーで脂肪由来幹細胞を培養することで、1つの幹細胞が約200~300倍まで増えます。

セルチャーで脂肪由来幹細胞を培養することで、1つの幹細胞が約200~300倍まで増えます

セルバンクの脂肪由来幹細胞

一方、セルバンクで培養した幹細胞は1000倍にまで増えます。

セルバンクで培養した幹細胞は1000倍にまで増えます

幹細胞の数を比較すると、培養技術を使うと幹細胞の数が劇的に多くなるので、非培養(CALやセルチャー)よりも幹細胞の効果もより期待できます。

幹細胞を採取する際に、非培養では大量の脂肪が必要ですが、培養では消しゴムの大きさ位のほんの少しの脂肪の量で問題ないのも、再生医療の培養技術があるからこそなのです。

総合的な脂肪由来幹細胞の数の比較

次に、総合的な幹細胞の数を見てみましょう。

総合的な脂肪由来幹細胞の数の比較

グラフで視覚化すると、セルバンクの脂肪由来幹細胞が圧倒的に多いです。

同じ培養型の脂肪由来幹細胞でも、セルチャーとセルバンクだと数の差は10倍近くあります。

定着率を上げるには 脂肪由来幹細胞 がカギ

これまでの医学の論文の中で、脂肪注入の定着率を上げるには幹細胞がカギということがわかっています。

幹細胞の数がより多ければ定着率が上がると言われています。

当然ですが、幹細胞の数が少数では確かな効果は見込めないでしょう。

脂肪由来幹細胞の豊胸には確実な結果を得たいのなら何よりも幹細胞の数(量)が大切です。

脂肪由来幹細胞のまとめ

  • 身体の中にある幹細胞は年齢と共に減っていく
  • 脂肪注入での定着力を上げるための大切な要素の一つは脂肪幹細胞
  • 脂肪幹細胞の豊胸手術によって、幹細胞の扱いも異なり、注入出来る幹細胞の数が異なる
  • 脂肪幹細胞の豊胸術には、2タイプ(非培養・培養)がある
  • 幹細胞の数が多ければ定着力も上がり、バストのサイズも永続的に維持できる見込みが高い

参考

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