美容のナレッジ
医師目線でのコラーゲンペプチドの効果について
コラーゲンペプチドとは
コラーゲンを酵素で分解し、低分子化したものが、コラーゲンペプチドです。
そのうち、PO(Pro-Hyp)、OG(Hyp-Gly)というジペプチドはともに皮膚への透過が確認できたことにより、化粧品としての美容効果も期待できるでしょう。
また、体に傷や肌にダメージのある人がコラーゲンペプチドを摂取すると、体内でコラーゲンを作る線維芽細胞の増殖に関係するのではないか、という研究もあります。
ペプチドには体内でホルモンや抗酸化物質などとして働くものがあります。
- 食肉や魚由来の動物性たんぱく質から作られるペプチド
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- 脂肪の燃焼作用
- 抗酸化作用
- 大豆などの植物性たんぱく質から発見されるペプチド
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- コレステロールや血圧上昇の抑制作用
このように最近の研究では、血圧降下ペプチド、抗菌ペプチド、 経口免疫寛容ペプチド、血栓抑制ペプチドなど多種多様な機能を持つペプチド(機能性ペプチド)が見出されています。
そもそも、コラーゲンとは何なのか
コラーゲンは、体内のおよそ30%をしめるたんぱく質です。コラーゲンの40%は皮膚、20%は軟骨や骨にあり、残りは内臓や血管など、体のさまざまな組織を構成しています。
コラーゲンとは
- たんぱく質(繊維状)
- ゼラチンの原料
コラーゲンを組み立てるアミノ酸の製造にビタミンCは必須
ビタミンCが欠乏するとコラーゲンの製造ができなくなり、壊血病になってしまうかもしれません。なお、ビタミンAもコラーゲンの再構築に関わっています。体内のコラーゲンの量を増加させたい場合は、ビタミンC・ビタミンAを積極的に摂取してください。
コラーゲンの種類
コラーゲンは「ポリペプチド鎖」という、ペプチド結合によってアミノ酸が直鎖状につながったものです。今までに、そのつながり方のパターンが約30種類ほど発見されました。そして19種類の型に分類され、「I型」・「Ⅱ型」・「Ⅲ型」・・・となっていきますので、ここでは代表的なI型~Ⅲ型をご紹介いたしましょう。
- I型
- 骨、皮膚の強化をするコラーゲン(皮膚のコラーゲンの90%をしめる)
- Ⅱ型
- 軟骨を構成するコラーゲン
- Ⅲ型
- 血管、皮膚を構成するコラーゲン(女性に積極的に摂取してほしい)
このように体内でつくられるコラーゲンは種類が豊富です。コラーゲンは体内でつくられる以外にも、素材や構造のちがう4種類のコラーゲンがあります。
- ゼラチン
- コラーゲンペプチド
- トリペプチドコラーゲン
- アミノ酸混合物
このなかで美肌効果が最も高いとされているのは、トリペプチドコラーゲンです。
動物性由来のコラーゲン
国内で、化粧品の原材料や食品に利用されている動物性由来コラーゲンは次の通りです。
- 牛の皮・骨
- 豚の皮
- 鶏の軟骨・足
このような哺乳類からつくりだすコラーゲンは、人間のコラーゲンと性質に類似性があるということが知られています。そのためアレルギーを引き起こす可能性が低いといって間違いないでしょう。低アレルゲン性だけでなく、生体適合性が高いという特徴も忘れてはいけません。また原材料の動物の部分により、つくりだせるコラーゲンの種類が変化します。
- I型コラーゲンはどんな部位からもつくりだせる
- II型コラーゲンは軟骨からのみつくりだせる
- III型コラーゲンは皮膚・血管のみからつくりだせる
除去しきれなかった脂肪は、動物性由来コラーゲン製品の臭いの元となります。丁寧に正確に「脂肪分を除去できるか」が、動物性由来コラーゲン製品のクオリティを決定づけるポイントとなるでしょう。
魚由来のコラーゲン
魚類の主要コラーゲン
- I型コラーゲン
- V型コラーゲン
魚由来コラーゲンをつくりだすための原材料は、魚を処理したときにでる骨や皮が使われています。それを酵素等で低分子化してコラーゲンペプチドに加工。そして魚由来コラーゲン製品として製品化していく流れです。原材料や加工方法を変えると、さらに低分子のコラーゲンペプチドをつくりだすことも不可能ではありません。ただし魚が新鮮でなかったり、しっかりと皮の脂分を除去できていなかったりすると、臭いのある製品になることがあるので、製造元は信頼できるところを選ぶと良いでしょう。
「コラーゲン」と「コラーゲンペプチド」の違い
コラーゲン
- コラーゲン+水で加熱すると3重らせん構造がほどけて、ゼラチンへ変化
- ゼラチンは温かい水にとける、冷やすと固まる(ゲル化)
このようにコラーゲンはゼラチンとして、ゼリー(食品)や医薬品のカプセルの原材料として利用されています。
コラーゲンペプチド
- ゼラチンを酵素で低分子化するとコラーゲンペプチドへ変化
- コラーゲンペプチドはゼラチンと違いゲル化して固まる性質はない
- 冷水にも溶けやすく、ゼラチンでは利用できなかった用途で活用できる
- サプリメントの成分として活用されている
つまり、コラーゲンは基本の物質であり、コラーゲンペプチドは溶けて分解された分子の小さな物質だということです。
コラーゲンペプチドって美肌に効果あるの?
これまで、コラーゲンは食べてもアミノ酸に分解されて小腸で吸収され、必要な臓器へと運ばれて利用されるので肌へのコラーゲン効果は期待できない、と考えられていました。しかし、コラーゲンを経口摂取すると、アミノ酸としてだけでなく、PO(Pro-Hyp)、OG(Hyp-Gly)というジペプチド※1)の形でも吸収され、そのジペプチドには皮膚の細胞に様々な効果を示すという最近の研究があります。
ところで、ペプチドって知っていますか?
「大豆ペプチド」や「コラーゲンペプチド」と記載された食品パッケージを見かけたことがある方も多いと思います。
ペプチド
タンパク質が分解されアミノ酸に至る前に生成される物質
タンパク質(アミノ酸が60個以上結合)を摂取すると、胃や腸で消化酵素により分解されペプチドが生成されます。その後、分解され最終的に一つの分子になったのがアミノ酸です。コラーゲンよりも小さく、アミノ酸よりも大きい分子構造を持つペプチドが、シワや肌のハリを改善させると美容業界でトレンドとなっています。
ここでは、コラーゲンとペプチドについて詳しくみていきましょう。
「美容目的・健康増進目的のコラーゲン」と「医療としてのコラーゲン」
誰もが知ってる「コラーゲン」。
食べてよし、塗ってよし。さらには医薬品として美容目的で皮膚への注射もできます。
コラーゲンは肌の弾力を担当している美肌にとって欠かせない成分です。
コラーゲンは美肌効果があると世間に認識されていますし、コラーゲンペプチドのように肌への影響の研究も進んでいます。しかし、経口摂取されたコラーゲンは、アミノ酸へと分解され、体内で必要な臓器で使われるので、コラーゲンとして直接肌への効果は期待できないという考えもまた事実です。
では一体、コラーゲンをサプリメントで経口摂取したり、コラーゲン配合の化粧品を使うことによって美容目的で期待するコラーゲンの効果を得られるのか、それともやっぱり無駄なのか、どちらなのでしょうか。
その答えを導き出す一つの考え方として、それぞれの立場からの目線というものがあります。この出発点が違うと同じコラーゲンでも180度異なったものに見えるのです。
- サプリや化粧品としてのコラーゲン
(美容目的、健康増進目的の一般人の視点) - 医者、医療の視点からでのコラーゲン
で考えてみます。
ワクチンで例えてみましょう。
致死性の伝染病を完全に抑え込むことが出来る医療が「ワクチン」です。
現在用いられているワクチンのほとんどは、死亡といった重篤な副反応は0.0000001%程度に抑えられています。そこで、例えば、発症(感染率)率0.1%、致死率10%の伝染病に対するワクチン医療をそれぞれの立場で考えてみます。
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患者さん・一般人目線
「ワクチン医療は『殺人医療』!日本国民(1.2億人)全員にワクチンを打った場合『1.2億人の0.0000001%、つまり12人が死んでしまう』感染率が0.1%だから、感染しない可能性が99.9%だった。この12人の副反応死は犬死にの可能性が極めて高いのでは!?」 -
医療・医者目線
「ワクチンは『天使のクスリ』!日本国民(1.2億人)全員にワクチンを打った場合『1.2億人×(感染率0.1%)×(致死率10%)=120,000人』の命を救うことが出来るから!!」
つまり同じワクチン医療であっても、立場が違うと見え方が違うのです。
医者が学ぶコラーゲン
医学生は、まず基礎医学を学びます。そして基礎医学のひとつである「生化学」にてコラーゲンの化学的性質や生体内での働きや代謝を学びます。
「生化学」とは、我々の身体を構成する物質(主にたんぱく質)の役割、その代謝(生成、分解)など、我々の身体を化学物質という観点から研究する学問です。
基礎医学
- 「生理学」
- 「生化学」
- 「解剖学」
「生理学」では、全身に張り巡らされた神経、血管の働きを学びます。「解剖学」は形態を観察する学問です。医学生は、この3分野に加え、さらに次の2つの学問も学びます。
- 「病理学」
… 病気になった時に人体はどのような状態になるのか - 「薬理学」
… 化学薬品に対し人体がどのように反応するのか
これらの基礎医学を全て修了すると、次のステップは臨床医学です。
臨床医学
- 実際に患者さんに接して診断・治療を行う領域のことで医療知識の体系的学問
しかし、6年ある医学教育の中において、この臨床医学を学ぶのは1年半程度に過ぎません。つまり、大切なのは臨床の知識では無く、人体とは何か?どんな化学物質がどういう風に化学反応を起こすのか?といった基礎医学をベースとした思考回路なのです。
医者は6年間という医学教育の中で「医者の思考回路」を徹底的に叩き込まれます。
インターネットが発達した現代。断片的な臨床知識なら、誰でも容易に習得できるようになりました。そして、ほんの断片的、部分的な領域ならば、現役バリバリの専門医にも十分対抗できる知識を持っている人はたくさんいます。でも、その知識は生きて使える臨床知識とは限りません。なぜなら、医者という思考回路にはめ込まれたパズルのピース(知識)ではないからです。
医学教育の中での「コラーゲン」
医者にとってコラーゲンは「生化学」の中に位置しています。
生化学
- 人体を構成する物質の役割とその代謝を研究する学問
医者の視点では「コラーゲン」は生化学的な考え方をしています。臨床知識(病気を扱う学問体系)にコラーゲン、ペプチドの知識は紐づけられてはいません。
そのため医者がコラーゲンについて考えると、以下のようになります。
「人間を含め、全ての有性生殖をおこなう動物(昆虫も!)は、全て細胞から出来ている。しかもその始まりは1個の細胞で、次のような働きをする。」
- たった1個の受精卵が細胞分裂を行う
- その細胞がコラーゲンを含める
- 1個の生命体(閉鎖した自己の中)に有機物質を作り出す。
コラーゲンはこの細胞の活動によって作り出される - 作り出されたコラーゲンなどの有機物質は、体外から原料であるアミノ酸(タンパク質)、糖、脂肪を取り込み、自身にとって有用な化学物質(コラーゲンなど)に変換、消費する
生命体は、物質間で相互に情報をやり取りする仕組みや、機構・機序が無数に存在し、多くの物質がシグナルを出し合い、補完、調節することで調和を保っているのです。コラーゲン(有機物質)はこのような複雑な細胞の営みの結晶です。
医者はこんな感じの思考回路で、コラーゲンという有機物質をとらえています。つまり、医者がコラーゲンを考える際、正常な生命の営みの中(基礎医学)にのみ、コラーゲンというパズルがはまり込むスペースがあると考えています。逆に、医学教育ではコラーゲンなどの有機物質は、生化学という基礎医学の中で登場するだけで、決して薬理学、臨床病理といった学問には登場しません。
ペプチドの線維芽細胞への影響
たとえば、以下のような文章があったとします。
「機能性ペプチド(P-O、O-G)は、腸で吸収後、血流にのって、皮膚、軟骨、骨などの細胞に運ばれて、細胞の働きを調整するようシグナル(命令)を出すことがわかってきました」
このような文章に対して、
-
患者さん・一般人目線
「お!すごいじゃん。コラーゲン!これから私もコラーゲンをいっぱい摂取するよう心がけよう!」 -
医療・医者目線
「ふーん。コラーゲンにはそんな働きがあるんだ。初めて知ったよ。でも、それは正常の人体の反応を見た研究成果分野であって、病気の予防や治癒を目的とした、臨床病理や薬理学の研究成果の話とは全然違うよね」
と、両者の反応は違います。
上記のような文章でコラーゲンペプチドについて断片的に知ると、多くの人が「やっぱりコラーゲンをサプリメントなどで摂取すると肌に効果があるんだ!」と思ってしまうでしょう。
そして、このような研究結果があるにもかかわらず、多くの医師はコラーゲンの経口摂取の肌への直接的な作用に対する疑問は変わらないのではないでしょうか。
コラーゲンは、細胞レベルでの生命の営みの中にのみ存在する物質です。
コラーゲンは、私たちの体を構成する全タンパク質の約30%を占め、生体内で重要な役割を担っています。
コラーゲンで構成されている組織
- 皮膚
- 骨
- 軟骨
- 腱
- 歯
生体内における重要性と、美容のために食品や化粧品などでコラーゲンを摂取することは別のものです。口から摂取したコラーゲンは、消化管内で分解され、ペプチドやアミノ酸になってから吸収されます。したがって、食べたコラーゲンがそのまま体のコラーゲンになることは決してありません。
体内におけるコラーゲンの合成ということだけを考えれば、コラーゲンやコラーゲンペプチドを摂取するよりも、タンパク質の豊富な食事とともに、コラーゲン合成に必要なビタミンCや鉄の摂取の方が重要であるという指摘もあります。
コラーゲン配合化粧品の美肌効果の真実
スキンケアの化粧品の中には、「コラーゲン」を配合したものが多くあります。化粧水や美容液、乳液、ジェルやクリームなど、あらゆる化粧品にコラーゲン配合の商品が並んでいることも珍しくありません。「肌のうるおいを保つ」「肌の弾力を保つ」など、様々なキャッチコピーがあり、「コラーゲン」=「美肌」といったイメージ戦略が出ているようです。また「コラーゲン配合の化粧品なら美肌に役立つ」という多くの人のイメージの先入観によるものもあります。しかし、肌の構造を思い出してみてください。
スポンジの上にハンカチを置いて、その上にガーゼがある状態です。コラーゲンは、スポンジの部分にたくさんあります。肌の弾力やハリは、スポンジ部分に支えられているため、このスポンジにあるコラーゲンは、肌にとって重要なものといえるでしょう。
肌の表面からスポンジのコラーゲンに、新たなコラーゲンを補給することは科学的には不可能だと考えられています。しかもコラーゲンは分子構造が大きいのです。例えば、肌から吸収できる分子の大きさがゴルフボール程度の大きさだとしましょう。一方、コラーゲンのサイズは東京ドームほどの大きさがあります。そのため医学的には「化粧品に配合されているコラーゲンが肌に浸透するというのは無理」という結論になってしまうのです。
肌のコラーゲンと化粧品配合のコラーゲンは別物
コラーゲンはたくさんの種類があります。専門的にいうと「アミノ酸が50個以上連なったポリペプチド」という状態で、鎖のように右巻きに絡み合っています。人間の身体では、生まれたときから各器官でコラーゲンの種類は決まっています。肌だけでなく、骨や関節、内臓などの細胞の周囲にもコラーゲンは存在し、肌のコラーゲンと、脚の腱のコラーゲンも、種類が違います。肌のコラーゲンと、脚の腱のコラーゲンの種類が同じであれば、腱は関節を支えたり動かしたりすることはできません。
コラーゲンは種類が豊富であり、器官によって必要な強度やクッション性などが備えられています。
肌のコラーゲンも1種類ではありません。クッションの役割を果たすコラーゲンもあれば、組織をつなぎ合わせる接着剤の役割を持つコラーゲンもあります。そして、化粧品などに配合されているコラーゲンは人間のコラーゲンを使ったものではありません。前項でもご紹介した通り動物や魚などのコラーゲンを使っています。つまり「化粧品で配合されているコラーゲン」と「自分自身の肌のコラーゲン」は種類が全く違うものなのです。
仮に化粧品でコラーゲンが肌の奥まで届いたとしても、それは、人間のコラーゲンとは違うものになります。つまり、化粧品のコラーゲンは、肌のコラーゲンと置き換え得ないのです。
コラーゲンを塗っても、肌のコラーゲンには置き換わり得ないのですから、化粧品配合のコラーゲンの実際の効果は疑わしいものになります。科学的には肌からの補給が証明されていないにも関わらず、コラーゲン配合の化粧品が山ほど売り出されているのが事実です。
コラーゲン配合化粧品は保湿目的に
確かに、肌の表面にコラーゲンをつけることで、水分の蒸発を防ぎ、肌の表面を保護することにはつながるかもしれません。高分子のコラーゲンの保湿力は高いので、「保湿」の意味でコラーゲン配合の化粧品を使うといいでしょう。「コラーゲン配合化粧品」=「美肌」は、肌へのコラーゲン補充ではなく保湿に役立つものと考えてください。様々な化粧品のイメージ戦略を正しく解釈することで、良い商品選びにも結びつけていただければと思います。
「肌の再生医療」とは…?
肌の再生医療は、ご自身の皮膚から細胞を抽出し培養して増えた細胞を、肌の老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。
参考
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https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
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※1)ジペプチドとは 2個のアミノ酸が結合したもの。2~50個程度のアミノ酸が結合したものがペプチドで、3個ではトリペプチドと呼びます。
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