美容のナレッジ
切らないフェイスリフト「糸リフト(スレッドリフト)」の効果・副作用、デメリット
糸リフトとは
“糸で顔を吊り上げる”
単純なようで、奥が深いもうひとつの切らないフェイスリフト術があります。
「しわやたるみは気になるけれど、休みがあまりとれないし、切開まで踏み切れない。でもどうせやるなら効果は確実で、長く持続させたい」
そのような願いを叶えられる「『フェイスリフト手術』と『レーザーによるフェイスリフト』の長所を兼ね備えた施術」である糸リフトをご存知でしょうか?
糸リフトは、コグと呼ばれる「かえし(トゲのようなもの)」の付いた特殊な医療用の糸を皮下組織に挿入し、「かえし」に皮膚を引っ掛け、たるみを引き上げます。
糸自体はいずれ体内で吸収され自然に溶けてなくなるので心配ありません。
糸リフトはダウンタイムがほとんどなく、治療時間は30分~1時間ほどで終わります。外科手術よりも手軽に、レーザーよりも確実に、リフトアップを実現することができるでしょう。
また皮下に糸が侵入することで、真皮線維芽細胞が刺激されます。そして糸周辺に新しくコラーゲンが作り出され、たるみを改善することが可能です。そのため糸リフトは、美肌効果も期待することができる治療法といえるでしょう。
糸リフトで得られる主な効果
「老化によって顔の筋肉が少しずつおちていき、さらに皮下脂肪も減ってくると、顔にたるみが現れる」ということは珍しいことではありません。糸リフトはそのたるみを改善すべく、このような手順で施術を行います。
- コグのついた糸を皮下組織に挿入
- 皮膚へ引っ掛ける
- たるみを引き上げる
このようにたるみを改善し、すっきりとした若い印象を受けるフェイスラインに整えることが、糸リフトで得られる主な効果です。また糸のまわりにできる線維化組織(コラーゲンなど)が、皮膚および皮下組織を支える土台となります。そのため糸が吸収され、なくなった後も、リフティング効果が持続していくでしょう。
コグの刺激で皮膚のなかの細胞が活性、エラスチンやコラーゲンの生成を促すことができるのも、糸リフトで得られる効果のひとつです。また施術箇所の工夫をすれば、さまざまな効果を得られます。
- ・たるみ改善(こめかみ~口角あたりに施術)
- ・ハリがでてツヤ肌になれる美肌効果(頬に全面的に細かく施術)
- ・鼻を高くする(鼻先に施術)
糸リフトの糸の種類
糸リフトに使用される糸は様々なものがあります。
商品名は医学的、学会的に統一されていないものが多く、美容外科クリニックが独自で命名している場合があります。そのため糸の特徴、効果などを調査、吟味してから治療をすることが大切でしょう。
糸リフトは、糸を筋膜や骨膜などの比較的固い組織に固定してつり上げる「フィックスドタイプ」と、固定せずに糸の反発力でたるみを改善する「フリーフローティングタイプ」の二つに分かれます。
日本で糸リフト用に出回っている溶ける糸の素材は、主に
- PCL(ポリカプロラクトン;Polycaprolactone)
- 約24~36ヶ月程度
- PLA(ポリ乳酸; polylactic acid、polylactide)
- 約18ヶ月前後
- PDO(ポリジオキサン;Polydioxanone)
- 約6~12ヶ月程度
等があり、持続期間が長い順にPCL→PLA→PDOとなります。
糸リフトの糸を体内に挿入すると、時間とともに加水分解されていきます。
そして尿などで排泄されたり、消化や二酸化炭素として体外に排出されたりします。
溶ける糸と溶けない糸の違い
糸リフトで使用する糸は、溶ける糸(吸収性)と、溶けない糸(非吸収性)の2種類があります。
溶ける糸(吸収性)
溶ける糸は施術してから1年以内で体内に吸収されるものが多いでしょう。そして効果が実感できる期間は1年よりもずっと短いので、一時的にリフトアップできるものだとお考えください。「結婚式の日だけ」「同窓会に向けて」など、イベントがあるときにおすすめです。
溶けない糸(非吸収性)
溶けない糸は、医療用のポリエステルやシリコンでできており、バイオ素材として使用されていることが少なくありません。そのため溶けない糸は安全性は高く、溶ける糸よりは持続効果が長い傾向にあります。
しかし効果は永久ではありません。効果の持続期間は個人差によりますが、36ヶ月程度と言われています。また老化が進んだときに「皮膚から透けて糸の線がでる」「ぎこちない引きつれを起こす」などの可能性がありますのでご注意ください。
糸リフトの糸の形状
糸リフトで使用する糸には「コグ(日本語で歯車)」と呼ばれるトゲのような突起が付いています。コグは様々な形状をしており、歯車のように皮下組織に糸がはまり、引き上げられる仕組みになっています。
糸リフトが行われるようになった当初は、カッティングスレッドと呼ばれる1本の糸に切り込みを入れてトゲを作ったタイプの糸を使用していました。糸とのつなぎ目であるトゲの付け根部分が弱く、皮下組織を引き上げる力が弱かっため、現在日本の美容外科クリニックで使用されている糸リフトのほとんどが、最初からコグが型取られた金型に液状のPDOやPLAなどの素材を流し込んで製造するコグと糸が一体となっているタイプになります。
これによって付け根の強度が増し、しっかりと皮下組織を持ち上げることが可能になりました。
主なコグの形状は以下の通りです。
- バーブタイプ
- 有刺鉄線のトゲや釣り針の“かかり”のような形状。見た目は三角形に近い。
- コーンタイプ
- 円錐状。360度方向に糸をひっかけることが可能。皮下組織内で糸が動いても表情を邪魔しない。
- 球体タイプ
- 先端が丸い球体で皮下組織と摩擦面を多くするために1cmあたり24個、4方向にコグがついている。
- メッシュ&バーブタイプ
- 棘の周りを網目状の3Dメッシュが囲い、2つの構造で皮下組織を持ち上げる。
肌質改善のためのスレッドリフト
「ショッピングリフト」と呼ばれる糸を挿入した後の異物反応を利用してコラーゲンを生成させ肌にハリを与えることを目的とした治療法があります。
ショッピングリフトの手順と効果
- コラーゲンを多く生成させるために、短くて細い糸リフトを20~50本程度顔全体に挿入
- 皮下組織に糸を挿入すると、人体は糸を「異物」ととらえ、体を守ろうと糸の周りにコラーゲンやエラスチンを増殖させる
- 増殖したコラーゲンは、糸をコーティングするように「コラーゲントンネル」を形成
- 糸が体内に吸収されるまでコラーゲンは増殖しつづけ、次第に糸だけが溶けてなくなる
これは人体の免疫機能を応用したものです。糸を挿入した後も肌内部ではコラーゲン産生が促されるため、老化による肌の衰えを自身の“治療能力”で緩和。細胞レベルでハリと弾力を高めることができます。
糸リフトのメリット・デメリット
糸リフトの施術を検討している人なら知りたいのは「糸リフトにはどんなメリットがあって、どんなデメリットがあるの?」ということではないでしょうか。糸リフトの施術をおすすめしたい人は
- ・たるみが悩みのたね
- ・マリオネットライン・ほうれい線が深い
- ・フェイスラインがゆるい
- ・肌がしおれている気がする
- ・負担の大きい手術をしたくはない
というような悩みを抱えている人です。この悩みが解決できるのがメリットであり、それに伴うリスクがデメリットになります。詳しくご説明いたしましょう。
メリット
糸リフトのメリットはフェイスリフト効果だけではありません。たるみを改善するだけではなく、さまざまな効果が期待できます。
- ・すぐに効果を実感しやすい
- ・たるみの予防
- ・肌にハリが出て弾力がつく
- ・「ツヤがでる」という美肌効果
- ・エイジングケアとしても活用できる
- ・施術の次の日からメイクしてOK!
このようなメリットはコラーゲンやエラスチンが、素晴らしい働きをしてくれるからなのでしょう。ダウンタイムが非常に短いのも、嬉しいメリットのひとつです。
デメリット
負担の大きい手術をせずに気楽に受けられ、たるみだけではなく肌の質感も改善できると人気の糸リフト。しかし効果が長続きしなかったり、ひどい失敗を招くことも少なくありません。
糸リフトは手軽さの反面、失敗が絶えないというリスクがあります。さらに効果が実感できない、長続きしないといった限界があることも否定できません。糸の力だけで組織を持ち上げているという構造的な問題と、そもそも、糸リフト自体に老化の根本原因が考慮されていないことが一番のネックであるとも言われています。
顔の老化の根本的な理由は、真皮線維芽細胞の減少と表情筋の衰えです。
糸リフトでも、異物反応によるコラーゲン生成での肌のハリ等の効果は期待できます。しかしコグで皮下組織を故意に傷つけ、その傷を治すために、真皮線維芽細胞は糸が溶け異物が体内からなくなるまでの数年間という長期間に渡り、想定外にコラーゲン生成のために働かざるを得なくなっているのです。
そのため、細胞自体の寿命が短くなったり、傷が治った(糸が溶けてなくなったときに、以前よりも細胞の活動能力がおちたりすることも考えなければなりません。繰り返し行うことができるといわれている糸リフト。しかし老化の根本原因である「真皮線維芽細胞の死滅を引き起こす可能性がある治療である」ということも考えておくべきでしょう。
「肌の再生医療」とは…?
肌の再生医療は、ご自身の皮膚から細胞を抽出し培養して増えた細胞を、肌の老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。
参考
-
※3)スプリングスレッド
-
※5)アスフィルPDOスレッド
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