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メラノサイト(色素細胞)とは
メラノサイトとは「色素細胞」や「メラニン細胞」とも呼ばれる、メラニンという色素を生成する細胞のことです。
メラニンは多くの人にとって耳なじみのある言葉かと思いますが、それを作り出しているのがメラノサイトです。
英語では「Melanocytes」といい、頭につく「Melano」は“黒い”を意味しています。
メラノサイトは、表皮と真皮の境目である基底層に存在しており、紫外線が真皮に届かないようブロックするためにメラニンを生成、紫外線による皮膚の傷害や悪性腫瘍(光発がん)、光老化を防御する働きを持っています。
メラニンとは
私たちの肌や毛髪の色はメラニンの量や種類で決まります。
メラニンは遺伝によってその比率が決まっており、種類はつぎの2種類です。
ユーメラニン(黒色メラニン)
黒い髪、黒い肌を作ります。黒人のメラニンは、ほぼユーメラニンです。私たちアジア人も多く持っています。
フェオメラニン(黄色メラニン)
透明感のある白い肌を生み出すと言われています。フェオメラニンを持つ白人の肌は透けるように白く、髪は金髪に近くなります。
アジア人はユーメラニンとフェオメラニンを両方持っている混合型で、肌は黄みがかっており、髪は黒~茶色の人が多いのが特徴です。
メラニンは、皮膚や毛髪の色を決める一方で、シミやそばかすの原因となりますが、メラニンの最も重要な役割は紫外線防御です。
具体的には紫外線をメラニンが吸収するのです。
体内でメラニンを生産するのはメラノサイトです。
メラニンの役割
メラニンの役割とは紫外線から肌と髪をまもること
紫外線を浴びると、皮膚の最上部にある「表皮の基底層に存在するメラノサイト細胞」がメラニンをつくりだします。そして紫外線の影響を減らすために、肌の色を濃くするという働きをするのがメラニンです。
ネガティブなイメージ(しみ・日焼けの原因)があるメラニン。しかし本来は、身体を守るためにつくられているものなのです。
シミを作るメラノサイト(色素細胞)は美肌の味方
メラノサイトは表皮と真皮のつなぎ目である基底層に存在します。
メラノサイトが存在する真皮と表皮の境目には真皮乳頭層と呼ばれる波打つような形状の真皮側の境界域があります。毛細血管が入り込み表皮に栄養や酸素を供給する役割を持つ層なのですが、その波打つ形状は、肌が引っ張られても元に戻れるように、アコーディオンの蛇腹のような役割を果たしています。言い換えれば、真皮乳頭層があるおかげで、肌は指で押してもすぐに元に戻ることができる弾力をキープしています。
この蛇腹を維持するのに欠かせないのが色素細胞なのです。
メラノサイトは、真皮乳頭層の上で鎖のようにたくさん連なって蛇腹を支えています。メラノサイトがなくなると蛇腹は維持できなくなります。すると、押しても戻る肌の弾力は失われ、のっぺりとした肌になってしまいます。
できてしまったシミを手っ取り早く消すために、レーザー治療を選択する方も少なくないでしょう。
ところが、Qスイッチ・ルビーレーザーなどのいわゆるシミ取りレーザーと言われるものは、シミのもととなるメラニン色素を破壊します。通常シミ取りレーザーではメラノサイトは破壊されませんが、過度にシミ取りレーザーを当てると色素細胞にもダメージが来ます。
シミができる理由とシミの種類
シミとくすみは表皮組織の老化が原因です。
表皮の細胞には「表皮細胞」と「メラノサイト」があり、約95%が表皮細胞で残り約5%がメラノサイトです。メラノサイトは神経細胞の一つですが、表皮の一番下のほうにいて、紫外線などに反応してメラニン色素を分泌します。
表皮細胞はメラノサイトからメラニン色素を渡されて、紫外線から細胞の中のDNAを守っているのです(DNAは遺伝情報を保存している「生物の設計図」とも言われる大切なものです)。そして、このメラニン色素は約28日の周期で表皮細胞とともにはがれ落ちていきます。そのため、一時的な日焼けなら約1か月後に消えるのです。
通常メラノサイトにより作られたメラニンは表皮に色を付けるだけです。色が付いた表皮はターンオーバーによって完全に生まれ変わります。日焼けによる色黒は、日がたつことによって、元の肌色に戻ってゆくのは、この表皮のターンオーバーのしくみによります。ところが、約28日の周期は、加齢とともに表皮細胞が老化して長くなってしまいます。一方、メラニン色素は変わることなく産出されます。その結果、表皮細胞のメラニン色素の濃度が高くなり、肌の透明感が失われていきます。これがくすみの原因です。
しかし、“シミ”とは、表皮ではなく、真皮の中にメラニンが蓄積され、地肌の色よりも濃く見える部位のことです。表皮ではなく真皮に色素を入れる入れ墨が一生消えないと同じです。表皮組織の底でメラニン色素の濃度が高い状態が続くと、皮膚組織にメラニン色素が漏れ出して、沈着してしまいます。
これが、色素沈着が進んだシミの正体なのです。正確には「老人性色素斑」と言います。「老人性」という名前がついていますが、30代からでもできてしまいます。
また、メラニン色素が生まれ変わる周期は、細胞の老化以外、紫外線を過剰に浴びたり、肌を過度に刺激したり、大きな精神的ストレスがかかるなどの原因で乱れてしまいます。
シミの種類
シミにはいくつか種類があります。
老人性色素斑(日光黒子)
多くの人が考えるシミはこの老人性色素斑です。紫外線の影響によってできる淡褐色~濃褐色のシミ。「老人性~」という名前がついていますが、20代後半からも出現します。
脂漏性角化症
老人性色素斑を放置したまま紫外線を浴び続けることで、シミの輪郭が広がり色が濃くなってイボのようになった状態のこと。
雀卵斑
いわゆるそばかすのこと。欧米人に多く見られるシミで、紫外線によって過剰にメラニンが作られた状態。遺伝も大きく関係する。
肝斑
女性ホルモンのバランスの崩れが原因と言われる頬骨のあたりに沿って左右対称にできるしみのことを言います。輪郭がはっきりしておらずもやもやっとした形でできることが特徴で、目の周囲にはできません。
炎症後色素沈着・一過性色素沈着
肌を強く擦ったりなど外側からの物理的刺激や肌の炎症を起こした後にできるシミ。日焼けも炎症後色素沈着の一種です。時間の経過とともに徐々に薄くなっていくことが特徴ですが、紫外線を浴び続けたり、過度のメラニンが真皮層に落ち込んでしまった場合(ターンオーバーが正常に行われない)とそのまま濃く残ってしまうこともあります。
シミはそれぞれ症状や特徴などが異なりますが、共通しているのは紫外線が主な原因だということ。そのため、どの種類のシミであっても紫外線ケアをしていくことが必要です。
紫外線を浴びると、表皮と真皮のつなぎ目である基底層で、真皮を守るためにメラノサイトからメラニンが生成されます。基底層は表皮の細胞が生まれ、上へと押し上げられていくターンオーバーのスタート地点です。つまり、通常であればメラニンが生成されても、ターンオーバーによって垢となって剥がれ落ちていきます。
ところが、紫外線を浴び続けるとターンオーバーで排出される前に新たなメラニンが大量に生成され真皮層に落ち込むことになります。
加えて、加齢などによるターンオーバーのサイクルの遅れでメラニンの排出がうまくいかなかった箇所がシミとなってしまうのです。
シミは消すのではなく作らせない
メラノサイトは、真皮乳頭層の上に鎖のように連なり敷き詰められて、肌の弾力やハリを維持する上でも重要な役割を果たしています。
しかし、メラノサイトの機能が低下すると、肌は弾力を失うだけではなく、バリア機能をも失うことになります。
そんなメラノサイトと肌の崩壊との関係は、認知症の患者さんでよく見かけられます。
なぜならば、メラノサイトは神経の一種であり、脳の神経細胞がダメージを受ける認知症の患者さんでは、メラノサイトも破壊されてしまうからです。
神経は、脳の神経細胞~脊髄へとつながり、さらに臓器や肌など全身を結ぶネットワークを構築しています。
神経への脳からの指令は“神経伝達物質”によって伝えられるため、脳の神経細胞が壊れると全身への神経ネットワークも崩れて行きます。当然、肌という身体の末端に存在する神経系の一種である色素細胞の機能もダメージを受けます。
認知症の患者さんは寝たきりになり、「褥瘡」という床ずれによる肌組織の壊死が起こることが多々あります。
これは、脳の神経細胞が少なくなった影響を、同じ神経系のメラノサイトも受けてしまうことで、肌の弾力やハリが失われ、寝ているときの身体の重みに耐えられずに、肌の細胞が圧迫されて死滅していく可能性も唱えられています。
加えて、人間の肌には目に見えない細菌がたくさん存在しています。
肌の細胞が破壊されれば、当然肌表面のバリア機能も壊れ、細菌が肌の奥へと入り込み、増殖して炎症を起こし、結果として肌は壊死してしまうのです。
このように、脳の神経細胞とメラノサイトは間接的なつながりがあります。
色素細胞は、シミの元を作り出す敵ではありません。
健康的な肌を維持するための強い味方であり、しっかり働いてもらうことこそが大切なのです。
そのためにやらなければならないのは、メラノサイトを敵視したケアではなく、メラノサイトに過度にメラニンを生成させないケアなのです。
シミを作らないための“バリア肌”作り
20代から一生懸命美白に取り組んでいたにもかかわらず、30代以降になるとシミができてしまったという人は少なくありません。
スキンケアの目的はとても簡単。ヒアルロン酸やコラーゲンなどの美容成分を補うことではありません。以下3つの肌本来の機能を奪う外的要因から肌を守ることです。
- 紫外線対策
- 乾燥対策
- 刺激対策
紫外線対策
紫外線にはUVAとUVBがあり、UVAは屋内にいても肌の表皮を突き進み真皮に到達、コラーゲン繊維とエラスチンを破壊。肌のハリや弾力が失われ、たるみやシワの原因になります。
UVBは表皮の色素細胞を活性化させて多量のメラニンを生成させ、日焼けや表皮細胞(基底層)の遺伝子に傷をつけ、シミや皮膚がんの原因になります。
強い紫外線はメラノサイトを活性化させると同時にダメージも与えます。
真皮を守るために24時間体制でメラニンを作り、疲れ果てると同時に紫外線からの攻撃でメラノサイトそのものが障害を受ける可能性もあります。
紫外線対策は、UVケアで紫外線をカットするしかありません。
日焼け止めはPA(UVAをカット)とSPF(UVBをカット)の2種類の両方の表示があるものを選び、また、紫外線吸収剤を含まないものをチョイスしましょう。
直射日光に当たる時間が15分以内なら、日焼け止めではなく日傘や帽子などを活用しても大丈夫です。また、日陰や曇りの日でも紫外線は降り注いでいますので油断することなく紫外線をカットしましょう。
乾燥対策
肌の最も大切な役割は、表皮の一番外側の角質層が担っています。なぜなら、我々のカラダと雑菌や刺激だらけの外界の最前線に立つのが角質層だからです。
角質層は異物や細菌が肌の中に入り込むのを防ぎます。そのため水溶性で保湿力の高い天然保湿因子(NMF)と細胞間脂質により水分を蓄えて容易に角質(ケラチンタンパク)が剥がれ落ちるのを防いでいます。
細胞間脂質の約40%がセラミドです。セラミドは水をはさみ込んでキープするので水分保持力が強く、また、角質(ケラチンタンパク)同士をつなぐ役目もしています。
肌の乾燥は、表皮に含まれる天然保湿因子や細胞間脂質が減って角質(ケラチンタンパク)同士をつなぐ力が弱くなることで、バリア機能が低下したり、水分が逃げてしまった状態です。
肌が乾燥する原因は、ターンオーバーの乱れ、暖房・冷房の長時間使用による空気の乾燥、紫外線によるダメージ、間違ったスキンケア、ビタミンB群の不足、加齢に皮脂分泌量の減少などがあげられます。
肌を乾燥させないためには、角質層の機能を守ることが何より大切です。
刺激対策
角質層は、0.02ミリしか厚みがありません。
角質層をこすれば、痛くもかゆくもなくその表面は容易に剥がれ落ちますが、剥がれ落ちたモノは垢ではありません。肌の保湿機能を担う重要な角質です。
界面活性剤を使用したクレンジングや洗顔料で顔をゴシゴシ擦ったり、美顔器でのマッサージ、ピーリングで無理に角質を剥がしたり等のスキンケアは角質を破壊してしまいます。
また、マスクの長時間の使用やティッシュで鼻を噛むという行為も肌にとっては刺激です。
わずかな刺激で角質は剥がれてしまうのです。
皮膚は身体を守る最大の臓器です。
ただ白ければ良いわけではありません。
美しい肌とは、表皮と真皮の役目がしっかりと果たされている肌のことです。
表皮のバリア機能がしっかり働き、正常なターンオーバーが維持されることで健康な表皮が作られます。それによって、肌のハリや弾力に関わる肌の本体である真皮の線維芽細胞(肌細胞)をしっかりと守ることができるのです。
「肌の再生医療」とは…?
肌の再生医療は、ご自身の皮膚から細胞を抽出し培養して増えた細胞を、肌の老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。
肌の再生医療について
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