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秦の始皇帝が不老不死の妙薬として愛飲していたと言われるプラセンタ。
ヒポクラテスは薬として治療薬に用い、楊貴妃、クレオパトラ、マリー・アントワネットはアンチエイジングのために常用していたと言われています。
ところが現代において、美白や美肌・アンチエイジングなどへのプラセンタの効果については明確なエビデンスがまだなく、医師の間でも賛否が分かれているのも事実です。
実際に美容目的でプラセンタ注射を行っている医師は「効果があった」という患者からの声を聞いて効果を確認している反面、「気休め程度」という医師や患者からの声も依然として多いため、プラセンタに対して安全性に不安をもち、その使用に懐疑的な人もいます。
プラセンタは本当に美肌やアンチエイジングに効果があるのでしょうか。
この先生が監修しました
北條 元治 先生
株式会社セルバンク代表取締役。東海大学医学部客員教授。
信州大学附属病院勤務を経てペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。
2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンクを設立。2005年、RDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。
著書に『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』・『美肌のために必要なこと』他多数。
北條元治のYouTubeチャンネルはこちら
株式会社セルバンクは特定細胞加工物製造事業者として、再生医療の普及活動を行なっており、その一環として関連する医療・美容情報につきましても発信しております。
- Contents
-
- プラセンタって何?=哺乳動物の胎盤のこと
- プラセンタには様々な栄養素が含まれているが…
- プラセンタ注射とは?栄養素を皮下注射や筋肉注射で注入する療法
- プラセンタ注射の効果について
- プラセンタ注射のデメリットは主に感染リスク
- 肌再生の専門家によるプラセンタ注射への見解
- プラセンタ注射と他の美容医療との比較
プラセンタって何?
=哺乳動物の胎盤のこと
プラセンタとは哺乳動物の胎盤のことです。
胎盤は胎児と母体を繋ぐインターフェースとして、各種栄養成分や成長因子の供給、排泄物などの処理を行っています。
人間以外の哺乳動物は、出産すると本能的に自分の胎盤を食べてしまいます。その一番大きな理由は、出産による体力回復のための手軽で、巨大な栄養源だからです。もちろん胎盤食には、出産によりダメージを受けた身体の自然治癒を促進し、出産による体力低下を速やかに回復させる効果があるのではないかとも言われています。
プラセンタの歴史は古く、1933年、旧ソ連の眼科医が「組織療法(様々な組織を、治療の目的で人体に移植(皮下に埋め込む)すること)」にプラセンタを使用したのが始まりと言われています。
日本では、当時、満州医科大学教授の稗田博士が、戦争で怪我をした兵士の治療に、組織療法として角膜、肝臓、胎盤などを実験的に移植したのが始まりとされています。その結果、胎盤での効果の可能性に手ごたえを得た稗田博士は、日本に帰国後、胎盤の研究に邁進し、1950年には組織療法を研究する組織療法研究所(フィラートフ会)が設立され、安全で投与法も簡便な製剤として「プラセンタ注射製剤」(正式にはヒト胎盤抽出物由来製剤)が出来上がりました。
プラセンタ注射製剤の原材料は人間の胎盤から抽出した胎盤製剤です。
因みに、薬局や薬店等で売ってる化粧品、サプリメントのプラセンタは、人間ではなく豚、馬、羊由来の胎盤を使用しています。海洋性プラセンタ、植物性プラセンタなどもあるようですが、そもそもプラセンタとは、哺乳類の胎盤由来の製剤を指します。したがって、胎盤を持たない海洋生物や、植物由来の物質はプラセンタとは、全く別物と考えた方がいいでしょう。
プラセンタには様々な
栄養素が含まれているが…
プラセンタには10数種のアミノ酸に加えタンパク質、脂質、糖質などの三大栄養素はもちろん、身体の働きを整えるビタミン・ミネラル・核酸・酵素といった生理活性成分、細胞の新陳代謝を促す成長因子などの栄養素が豊富に含まれています。
これらの成長因子やインターロイキンは創傷治癒や生命維持に必要なものです。ところが、プラセンタ注射製剤のこれらの含有成分は非常に微量で、効果については実証されていても、作用機序については解明されていない部分が多いのが実情です。
プラセンタの主な成分
- ・ウラシル
- ・アデニン
- ・グアニン
- ・チミン
- ・シトシン
- ・アミノ酸 リジン
- ・アラニン
- ・アスパラギン酸
- ・ロイシン
- ・グルタミン酸
- ・アミノ酢酸
- ・バリン
- ・セリン
- ・チロシン
- ・フェニルアラニン
- ・トレオニン
- ・アルギニン
- ・プロリン
- ・シスチン
- ・イソロイシン
- ・メチオニン
- ・ヒスチジン
- ・ミネラルナトリウム
- ・カリウム
- ・カルシウム
- ・マグネシウム
- ・リン
- ・鉄
- ・キサンチンなど
プラセンタに含まれる主な成長因子(GF)、インターロイキン
- ・肝細胞増殖因子(HGF)
- ・神経細胞増殖因子(NGF)
- ・上皮細胞増殖因子(EGF)
- ・線維芽細胞増殖因子(FGF)
- ・インシュリン様成長因子(IGF)
- ・免疫力を向上させる成長因子
- ・インターロイキンⅠ
- ・インターロイキンⅡ
- ・インターロイキンⅢ
- ・インターロイキンⅣ
プラセンタ注射の効果について
プラセンタ注射は更年期障害や肝機能の改善に効果があり、保険適応となることがわかりました。では、他にもプラセンタ注射の効果はあるのでしょうか。
プラセンタ注射の効果は薬理作用?
現在治療薬として認可を受けている作用以外にも、プラセンタには以下のような薬理作用があると言われています。
- 免疫賦活・調整作用
- 自律神経調整作用
- 内分泌調整作用
- 基礎代謝向上作用
- 抗酸化作用
- 強肝・解毒作用
- 抗アレルギー作用
- 抗炎症作用
- 血行促進作用
- 疲労回復
- 保湿
- 美白作用
- 美肌
- 育毛促進
プラセンタには様々な有効成分が含まれています。しかし、どれも微量なため、それがどのように生体へ影響を及ぼしているのかはまだ解明されていないのが実情です。
プラセンタ注射の美容効果
プラセンタ注射をしたからといって必ず美肌になったり、シミが消えたりシワが改善するとは限りません。
ただ、プラセンタ療法での効果が認められている抗炎症作用、抗酸化作用、肝細胞再生作用等が総合的に全身に作用した結果、肌の艶が良くなり美肌になったりシミが薄くなったりということは十分考えられますし、実際にその効果を実感している人がいることも事実です。
プラセンタ注射の効果の表れ方と持続期間
プラセンタ注射の効果の表れ方には個人差があります。中には初めてプラセンタ注射を打った人でも、翌日から効果を実感する方もいますが、通常はおよそ2~3回で効果を感じ始めることが多いようです。
プラセンタ注射の持続期間は非常に短く、こちらも個人差はありますがおよそ2~3日程度と言われています。プラセンタ注射の効果を持続させるためには、頻繁に治療を続けていく必要があるといえます。
プラセンタ注射のデメリットは
主に感染リスク
デメリットとして知っておくべきことは、一度でもプラセンタ注射を行うと、厚生労働省が定めた規定、つまり、未知なる感染症に対する安全性が証明されていないという理由から、原則、一生献血が出来なくなってしまいます。ですので、プラセンタ注射を受ける際には、今後献血が出来ないのを理解した上でプラセンタ注射を選択することが大事です。
また、プラセンタ注射の効果は永久に持続するものではありません。プラセンタの効果持続期間は2~3日程度から数週間以内と言われており、持続性は低いです。美肌効果を保つために、継続的に病院やクリニックでプラセンタ注射を受けている方もいます。
さらに、若返りやアンチエイジング、美容目的でプラセンタ注射を受けるのであれば、目尻やほうれい線など、気になる部位にはダイレクトには効かないということはぜひとも知っておくことが大切です。プラセンタ注射は、血管に直接プラセンタを入れる方法ですので、身体全体にプラセンタを巡らせる形になります。自分が気になる部位のシワやたるみなど、ピンポイントの部位に直接効くものではありません。
プラセンタ注射のリスク・デメリットまとめ
- 重大な副作用はないが、アレルギーがでる可能性がある
- 変異型クロイツフェルトヤコブ病(ヒト型の狂牛病)に感染するリスクが0%とは言えない
- 上記の感染リスクが理由で、今後一切献血ができなくなる
- 即効性はない
- 希望した部位に効果を得られるとは限らない
- 持続性が低いので、効果を保つには継続的に打つ必要がある
美容目的での
プラセンタ療法について
美容目的でのプラセンタ療法は自費診療です。そのため、医療機関ごとに値段、方法も違います。
プラセンタを点滴で投与している医療機関もありますが、メルスモンは「皮下注射」、ラエンネックは「皮下または筋肉注射」であり、血管への注射や点滴の指示はプラセンタ製剤の製薬会社からはなされていません。
血管内投与は、身体の構成要素やエネルギーになる物質、つまりアミノ酸やブドウ糖、ビタミンなどの栄養素、カルシウムやカリウムなどの電解質、血液などを補給するために行われます。
一方、皮下・筋肉注射は身体の機能を高める栄養因子(trophic factor)、サイトカインなどの調節因子、インスリンなどのホルモン、 プラセンタに含まれるHG などの増殖因子を補給するのに適した投与法です。
プラセンタの投与法の違いは、効き方にも影響すると考えられています。
血管内に投与した場合には、数時間で体外へ排泄され、皮下・筋肉注射ではゆっくりと吸収され、効果は3日から1週間程度持続すると言われています。
また、2009年には美容目的での静脈内へのプラセンタ投与により、アナフィラキシーショックを起こしたケースが報告されています。効果・安全面においても、他の成分と組み合わせたカクテルと称する点滴や静脈注射でのプラセンタ注射は、よく検討して行うことをお勧めします。
プラセンタ注射をやめるとどうなる?
プラセンタ注射を継続的に打っていた場合、治療をやめると、プラセンタ注射によってもたらされていた効果が徐々に感じられなくなってきます。エイジングケアの面だけでなく、疲れやすさや体調の変化を感じる人もいるようです。
しかし、それは単純にプラセンタ注射を打つ前の状態に戻るということですので、大きなデメリットとはいえないでしょう。
海外ではプラセンタ注射が禁止されている?
アメリカではプラセンタ注射は禁止されています。
どの理由からプラセンタ注射が禁止となったのか、正確な理由は定かではありませんが、感染症など副作用リスクがあることや、製造工程の問題が生じたことがあり、製造禁止になったとも言われています。
ただ、実際にプラセンタが開発されてから50年以上の期間、感染症の発症が確認されたケースはないようです。
また、プラセンタ注射が禁止されているアメリカでも、プラセンタのサプリメントは数多く流通しているようです。
肌再生の専門家による
プラセンタ注射への見解
プラセンタ注射は効果がある?
純粋にプラセンタの点滴や、ヒトの胎盤エキス(医療用)を飲むということに関しては、それなりの理屈が通っていると思います。各種ホルモンやアミノ酸が豊富なので栄養素的にも良いですし、とくに更年期を迎えた女性にはホルモンバランスを整え、少しお肌の調子を良くするというような効果はあってもおかしくはないかと思います。
医療用のプラセンタに関しては薬効もありますし、肝炎の治療にもなっています。そういったものを飲用した場合、おそらくある程度の薬効はあるといえるのではないでしょうか。
「肌の再生医療」とは…?
肌の再生医療は、ご自身の皮膚から細胞を抽出し培養して増えた細胞を、肌の老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。
肌の再生医療について
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