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【医師監修】「タバコ顔」とは?喫煙とお肌の老化の関係について

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「タバコ顔(スモーカーズ・フェイス)」という言葉を知っていますか?

タバコは肺ガンや心臓病など、様々な病気を引き起こすとも言われています。近年では、喫煙を続けていると、美容にも悪影響であることが医学的に明らかになってきており、皮膚の老化を加速させる原因として「タバコの害は紫外線に次ぐ」とも言われています。

この記事ではタバコと肌の関係について、詳しく解説します。

北條医師

この先生が監修しました

北條 元治 先生

株式会社セルバンク代表取締役。東海大学医学部客員教授。
信州大学附属病院勤務を経てペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。
2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンクを設立。2005年、RDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。
著書に『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』・『美肌のために必要なこと』他多数。

北條元治のYouTubeチャンネルはこちら

Contents
  1. タバコ顔ってどんな顔?
  2. タバコ顔になる原因
  3. タバコ顔にならないための対策
  4. タバコ顔を治すことはできる?

タバコ顔ってどんな顔?

喫煙を続けると「タバコ顔(スモーカーズ・フェイス)」になってしまうと言われていますが、いったいタバコ顔とはどんな顔なのでしょうか。

タバコ顔の特徴

タバコ顔とは、喫煙の影響で皮膚が黒ずみ、ハリや艶が失われ、シミや小ジワの多さが目立つ、喫煙によって実年齢よりも老けて見えてしまう顔のことを言います。具体的には以下のような特徴があります。

  • 上まぶたが下がる
  • 下まぶた(目袋)のたるみ
  • 目の下のクマ
  • 深いほうれい線
  • 上唇のシワ
  • あごのたるみ
  • まぶたの色素沈着や血色の悪さが目立つ
  • やつれて病的に見える
  • 歯肉が黒ずんでいる

顔の老化と喫煙の関係性についての研究結果

米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のチームが、喫煙によって目の下のたるみや口の周りのシワが増えるなど、顔の老化が早くなることを、双子を比較した研究で確認し、形成外科の学会誌に発表しました。

研究は18~78歳の双子79組を対象にして行われ、うち45組は、1人が喫煙者でもう1人が非喫煙者という組み合わせ。残る34組はともに喫煙者ですが、2人の喫煙歴には5年以上の開きがあります。

それぞれの写真を顔のパーツごとに比較したところ、喫煙者と非喫煙者の双子では、喫煙者の方が非喫煙者より老けて見える確率が57%との結果が出ました。

双方とも喫煙者の場合でも、長く吸っている方が年上に見える確率が63%だったのだそうです。

この研究では、飲酒やストレス、日焼け止めの使用の有無などの要因についても調べ、研究対象となった双子ではこれらの要素に大きな違いはなかったそうで、研究チームを率いたバーマン・ガイアロン医師は、「喫煙はコラーゲンの生成を抑制するから、コラーゲンが減少し皮膚の血行も悪くなる。またニコチンは肌の厚みを減らす。こうして肌の弾力性が衰え、老化が早く訪れる」と語っています。

タバコ顔になる原因

喫煙によってタバコ顔になってしまう原因は、タバコに含まれる4,000種類以上の化学物質、約200種類の有害物質、約60種類の発がん性物質によるものだと言われています。

タバコに含まれるニコチンによって老化が加速する

タバコに含まれるニコチンには、依存性があることはよく知られています。タバコを吸うと、ニコチンが肺から数秒で脳に達し、脳内のニコチン受容体に結合し、快感を生じさせる物質(ドーパミン)が放出されることで「気持ちいい」と感じます。しかし、時間が経つと体内のニコチンが減少し、イライラなどの禁断症状が出てきます。一度喫煙すると止めるのが大変だと言われる理由はこのためです。

さらに、ニコチンは依存性を高めるだけでなく、副腎※1)からのカテコールアミン※2)分泌を亢進させ、血管収縮、血圧上昇、脈拍増加をきたし、心臓に大きな負荷をかけます。

ニコチンは肌にも悪影響を及ぼします。ニコチンの血管収縮作用により血行が悪くなり、皮膚の一番外側の表皮への栄養が十分に行き届かないと、細胞分裂による肌の新陳代謝(ターンオーバー)が滞り、くすみや肌の乾燥が進み、細かいシワの原因になります。

タバコと女性ホルモン

タバコに含まれるニコチンは女性ホルモンの代謝を阻害し、分泌を低下させます。

卵巣で作られた女性ホルモンは、血液によって子宮、膣、肌、骨などに到達し作用しますが、その途中で肝臓で代謝され(壊されて)徐々に作用が弱くなります。この肝臓での代謝をタバコの成分が促進させ、女性ホルモンが早く失活するため、血液中の濃度が低下するのです。

女性ホルモンは、女性の身体にとって重要な役割を果たしており、美肌をつくるためにはとても重要な存在です。卵巣から分泌される女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、このうち、エストロゲンは“美肌ホルモン”とも言われています。

エストロゲンは、皮膚の表皮の角化細胞や真皮線維芽細胞、色素細胞(メラノサイト)、皮脂腺などに作用して、皮膚の生理機能に重要な役割を果たすことが知られています。

エストロゲンによる主な皮膚への作用

角化細胞増殖促進
表皮層における皮膚のバリア機能の促進
線維芽細胞増殖促進
真皮層の機能の促進
コラーゲン産生促進
潤いの保持
エラスチン繊維増加
ハリや弾力の維持
メタロプロテアーゼ※3)の産生抑制
シワの形成抑制
創傷部位フィブロネクチン※4)量増加
創傷治癒の促進

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喫煙によって女性ホルモンが低下すると、肌以外にも様々な悪影響が

喫煙によって女性ホルモンの分泌が低下すると、肌への悪影響だけではなく、生理不順や卵巣への血流障害による卵巣萎縮による不妊のリスクが高くなったり、閉経を早めてしまうと言われています。その他にも、女性ホルモンの不足は骨密度も低下させるため、1日15本以上吸う女性は、4倍の確率で骨折を起こすという研究結果があります。

タバコと活性酸素(フリーラジカル)

タバコの煙には、体内の酸化や炎症を引き起こし、活性酸素(フリーラジカル)を産生する物質が多く含まれています。そのため、タバコを吸う人はもちろん、吸わない人でもタバコの煙にさらされることで、活性酸素が体内で多量にできてしまいます。

また、タバコに含まれるニコチンは経皮吸収されます。ニコチンが皮膚の真皮層に侵入し、真皮層で活性酸素が発生すると、皮膚のハリや弾力を保つ成分を生み出す真皮線維芽細胞にダメージを与えます。その結果、肌のハリや弾力が失われたり、皮膚の結合組織の破壊が起こります。さらに、活性酸素はシミやくすみなどの原因となるメラニンを増加させてしまうことが知られています。

この活性酸素から細胞や組織を守る作用をするのが、「抗酸化物質」と言われる活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質です。抗酸化物質の代表選手がビタミンCです。

タバコとビタミンC

「美肌サプリといえばビタミンC」と言っても良いほど、ビタミンCが美肌にとって欠かせない成分であることはよく知られています。

ビタミンCは、化学名でアスコルビン酸(ascorbic acid)とも呼ばれる、水溶性ビタミンの一種です。

喫煙によってビタミンCが破壊されてしまう

肌の美しさを保つのに欠かせないビタミンCですが、タバコを1本吸うとおよそレモン1個分(25~100mg)が破壊されてしまうといわれています。

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、15歳以上の人はビタミンCを1日に100mg摂取することが推奨されています。つまり、たった1~2本のタバコを吸うだけで、1日に必要なビタミンCが失われてしまうのです。

人間は体内でビタミンCを合成することはできないため、深刻なビタミンC不足が引き起こされます。その結果、タバコ顔の特徴であるシミ、シワの増加や肌のくすみなど、見た目の老化スピードが加速します。それだけではなく、風邪をひきやすくなったり傷が治りにくくなるなどの健康への悪影響も出てきてしまいます。

ビタミンCの不足で肌の老化スピードが加速する

ビタミンCは、肌の弾力を保つコラーゲンを生成するために必須の化合物です。ビタミンCが不足すると、肌のハリ・ツヤが失われ、シワも出来やすくなります。また、メラニン色素が出来るのを防ぐ作用があるので、ビタミンCが不足すると、シミやそばかすなどの色素沈着を起こしやすくなります。

さらに、ビタミンCは、活性酸素による肌の酸化を抑える作用があるので、不足するとその抗酸化作用も失われてしまうため、老化スピードが加速されてしまいます。

タバコ顔にならないための対策

ビタミンCを多めに摂る

ビタミンCは水溶性のため、通常、体内に吸収されてから2~3時間後には排出されてしまいます。そのため、1日数回に分けて摂取するのがおすすめです。タバコを吸う人は、破壊されてしまうビタミンCの量を考慮し、より多めに補給するのが望ましいです。

ビタミンCが多い野菜ランキング(100gあたりの含有量)

  1. パプリカ…170mg
  2. ブロッコリー…120mg
  3. ケール…81mg
  4. モロヘイヤ…65mg
  5. かぼちゃ……43mg
  6. じゃがいも…35mg

スキンケアにビタミンCを取り入れる

巷にはビタミンC誘導体が配合された化粧品が数多く出回っています。その中には肌のターンオーバーを整え、メラニンの排出をサポートする美白有効成分が配合されているものもあります。

しかし、化粧品におけるシミやくすみなどへの作用は、あくまで「予防」が目的です。化粧品の役割は、将来的に色素沈着やくすみのない明るい肌を目指すために日常的にケアをするのであり、すでにタバコ顔のような老化現象が起きている場合には化粧品では対応できません。

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思い切って禁煙をする

ビタミンCの摂取やスキンケアなどでは、残念ながら一時的に対処をすることしかできません。タバコによる肌の老化を食い止めるためには、禁煙することがベストであることは間違いありません。

ニコチンには依存性があるため、禁煙を決意しても、自分の意志の力だけで成し遂げることは難しい場合もあります。禁煙外来のある病院やクリニックを受診し、ニコチン・ガムやニコチン・パッチなどを活用しながら禁煙するなど、医師や薬剤師の指導を受けて、禁煙を進めることも選択肢の一つです。

タバコ顔を治すことはできる?

お肌はいくつかの層になっています。喫煙によって起きた肌トラブルでも、お肌の表面である「表皮」で起きたもの…例えば、軽度なくすみや乾燥などのトラブルは、禁煙することで改善を期待できます。なぜなら、表皮はターンオーバーと呼ばれる一定の周期で生まれ変わっているからです。

しかし、お肌の「真皮」で起きたトラブル…例えば、活性酸素によって真皮線維芽細胞がダメージを受けたことによるコラーゲンやエラスチン繊維の産生力の低下や、皮膚の結合組織の破壊などは、自然回復することは難しいでしょう。

喫煙によって一度ダメージを受けた細胞は、たとえ禁煙をしたとしても、残念ながら元のような元気な状態へと戻ることはありません。では、すでにタバコ顔になってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。

肌の再生医療を受けて、細胞の力で若返る

肌の再生医療は、自分の皮膚から真皮線維芽細胞を取り出して培養し、増やした細胞を再びお肌の真皮に移植(注入)する治療法です。ダメージを受けた細胞を回復させるのではなく、細胞の数そのものを増やして、コラーゲンなどの生成量を増やすことができる、肌の老化を根本から改善させることができる治療法です。

肌の再生医療を受けることで、あなた自身の細胞の力でタバコ顔を改善させることができます。

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肌の再生医療は、ご自身の皮膚から細胞を抽出し培養して増えた細胞を、肌の老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。

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