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人は誰でも時間とともに年齢を重ね、成長し、やがて老いていきます。小さなころの成長は喜ばしいものですが、大人になるにつれて「ずっと若々しくいたい」「みずみずしいお肌を保ちたい」と、老化に抗いたくなるものです。
アンチエイジングという言葉はお肌のケアや美容の話題でよく目にしますが、具体的にはどんなことを指すのでしょうか。このページでは「アンチエイジング」について徹底的に解説していきます。
老化と加齢とは?アンチエイジングに効果的なセルフケアや治療法、やってしまいがちな間違ったアンチエイジング法など、肌再生の専門家の意見も交えてまとめています。
この先生が監修しました
北條 元治 先生
株式会社セルバンク代表取締役。東海大学医学部客員教授。
信州大学附属病院勤務を経てペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。
2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンクを設立。2005年、RDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。
著書に『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』・『美肌のために必要なこと』他多数。
北條元治のYouTubeチャンネルはこちら
株式会社セルバンクは特定細胞加工物製造事業者として、再生医療の普及活動を行なっており、その一環として関連する医療・美容情報につきましても発信しております。
- Contents
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アンチエイジングとは
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アンチエイジングのためにできること
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気を付けたい!間違ったアンチエイジング法
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肌再生の専門家が教えるアンチエイジングについてのQ&A
アンチエイジングとは
アンチエイジング(anti-aging)とは、エイジング(aging)=加齢に、アンチ(anti)=反対・対抗すること。日本語に訳すと「抗加齢」または「抗老化」という意味の言葉です。
言い換えるならば、老化のスピードを遅くし、長く健康でい続けるということです。
「老化」と「加齢」は同じもの?
老化とは
老化とは、加齢によって身体のあらゆる機能が低下することをいいます。具体的には、筋力、神経伝導速度、肺活量、病気に対する抵抗力などすべての生体機能の低下を指します。
老化と加齢は違います!コントロールできる「老化」について【医師の見解】
加齢と老化というものは、似て非なるものです。
加齢とは、=年齢と捉えて良いでしょう。誰でも同じように時を経て、加齢=年齢を重ねていきます。この事実には、誰も抗うことができません。
しかし、老化は誰でも同じ速度で進行するものではありません。
同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば、実年齢より老いて見える人もいます。皮膚の若さ・シミやシワが少ないなどの表面的な部分もそうですが、筋肉の動きに伴う姿勢や歩く速度、持久力や心肺能力についても、老化による差がはっきりと出てきます。
同じ年齢であっても心肺能力が高く筋力があり、シャキっとした姿勢を保てる人と、そうでない人では、前者のほうが老化をコントロールできていると言えます。このことからわかるように、年齢はコントロールできませんが、老化はある程度コントロールできるものなのです。
美容的なお肌のケアや、適度な運動などの身体的なケアでうまく老化をコントロールし、より楽しく豊かな人生を送りましょう。
見た目に表れるエイジング(加齢)とは
エイジング・老化が気になるのは、それが見た目にも分かりやすく表れてしまうからだと思います。それでは、具体的にエイジングや老化が気になる部分はどこでしょうか。
老化とは、あらゆる身体機能の低下のことを指しますが、筋力の低下や病気への抵抗力の低下については、目で見ただけではほとんど分かりません。やはり、エイジングで気になるのはなんと言っても“お肌”でしょう。
具体的には、顔や手などの皮膚のハリ艶、弾力、シワ、たるみ、シミ・くすみなどの有無が挙げられます。同じ年齢でも、肌にハリや弾力がありシワ・たるみが少ない人と、肌にハリが無くシワが深く刻まれ、たるんでいる人では、見た目の年齢が何歳も違って見えてきます。後者の方がいわゆる「老け顔」に見えてしまうのです。
美容目線で言う「アンチエイジング」とは、これらの加齢によるシワ・たるみなどの肌のトラブルに最大限抵抗するべく行なう行為だと言えるでしょう。
アンチエイジングのために
できること
細胞の老化が進まないように、日頃からできることはないものでしょうか。
残念ながら、老化の進行を「止める」ということはできません。ただし、セルフケアや生活習慣の改善で、老化のスピードをある程度コントロールすることは可能です。また、医療機関やクリニックで治療をすることで、すでにできてしまったシワ・たるみなどの改善を目指すという方法もあります。
ここではアンチエイジングが期待できる様々な方法についてご紹介していきます。
アンチエイジングのためのセルフケア
UVケア(紫外線対策)
日焼けの予防はアンチエイジングのために非常に大切です。
ただし、“若々しく、楽しく人生を送ること”もアンチエイジングとして大切だということを忘れないようにしてください。「アウトドアが好きだけど、紫外線を浴びないように外に出るのを我慢しよう」などと、老化予防のために、極端に自分の好きなことを我慢するというのは逆効果です。
また、紫外線というのは、必ずしも「悪」というわけではありません。ただし「善」というわけでもありません。お日様を浴びると気持ちが良いですが、炎天下でガードをせず日差しを浴びてヤケドをする、というのはもちろん良くありません。太陽から届く自然なものですので、うまく活用ができると良いでしょう。
肌の老化を加速するのは紫外線
乾燥予防・保湿ケア
乾燥・保湿対策と言うと、化粧水やクリームを塗るということが思い当たります。確かに、皮膚表面の保湿も大切ですが、水分を摂取して身体の内部から補給するということも非常に大切です。
ヒトのお肌は「表皮」と「真皮」に分かれています。
表皮は、死んでいる組織(セラミド、ケラチンなど)で出来ています。そのため、何もしないと、どんどん水分が失われていきます。
真皮は表皮の下にある組織で、血が通って生きており、水分がたっぷりと蓄えられています。
化粧水や乳液などの化粧品では真皮まで成分を浸透させることはできませんので、こまめに水分補給をして、身体の内側からも保湿ケアをすることが大切です。
摩擦を避ける
摩擦は皮膚のバリア機能を破壊してしまうので、不必要に皮膚を刺激するようなことは避けましょう。
洗顔・石鹸を使用する、界面活性剤の入ったクレンジング剤などを使うこともお肌を摩擦することになります。クレンジングはお化粧をしている時だけにし、メイクを落とす際もゴシゴシと擦らず優しくなでるようにしてください。
マスクも外せる時は外すなど、なるべくお肌への刺激になるような摩擦を避けるよう心がけると良いでしょう。
禁煙をする(喫煙しない)
タバコが身体に良くないという事実はよく知られているものですが、美容の面ではどんな悪影響を及ぼすのでしょうか。
タバコを吸ったことがある人は、タバコを吸うと『キュッ』と身体が締まるような、指先などの末端が冷たくなる感覚が分かるでしょう。これは“末梢血管”が収縮しているために感じるものです。
血管には、
という重要な役割があります。
血管が収縮すると、細胞に栄養が届かなくなります。それが積み重なると、細胞にダメージがたまり、いずれ壊死してしまうのです。そして臓器・皮膚もダメージを受けていくということです。
喫煙は、皮膚へのダメージが進行し、見た目の老化を進行させてしまいます。アンチエイジングを望むなら、禁煙することをおすすめします。
タバコ顔とは?
適度な運動で血流改善
運動はアンチエイジングには必須だといえます。
筋肉を収縮して進展させる…筋肉を動かすと、血流が良くなり精神的にも良い影響があります。老化は筋肉の衰えも引き起こしますが、適度な運動をし体を鍛えることで姿勢がよくなり、お肌だけでなく、見た目全体が若々しく見えるでしょう。
睡眠をしっかりと取る
睡眠は人間の三大欲求の一つです。私たちが生きていくには欠かせないものです。これが疎かになってしまうと、当然のことながらお肌だけでなく身体の内側から不健康になり、老化を加速させてしまいます。
睡眠には体力の回復だけでなく、ストレスの改善や、精神を健康に保つ効果もあります。
WHOの定める“健康”の定義は「単に肉体に疾病がないだけでなく、精神的にも安定している状態」となっています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
‐健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
- 出典
- 日本WHO協会『世界保健機関(WHO)憲章とは』
心身ともに健康を保ち、若々しくいるためには、睡眠時間をしっかりと確保することが非常に重要です。
規則正しくバランスの良い食生活
毎日決まった時間に栄養のある食事を摂ることは、当然ですが、健康だけでなく美容やアンチエイジングにおいても大切です。
食事では、三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)をしっかりと摂ることを心がけましょう。特定の栄養素…例えば糖質などを徹底的に避ける、といったことはおすすめしません。
ただし、オーバーカロリーにだけはならないように気を付けましょう。
常識的な範囲で楽しく食事をし、腸内環境を整えるのが良いでしょう。腹八分目を基本とし、腸内細菌を労わることをおすすめします。
セルフケアでできるアンチエイジング法のまとめ
- UVケアの徹底
- 水分補給で内側からの保湿
- 規則正しい食生活で腸内細菌を整える
- 適度な運動を継続し、血行をよくする
- 睡眠をしっかりとる
- 不必要な摩擦、喫煙はなるべく避ける
以上のことが、誰にでも今すぐ実践できる、とても効果的なアンチエイジング方法の全てです。上に挙げたどの項目も、誰もがすぐに実践できることですが、このひとつひとつを毎日繰り返ししっかりとやっていく、継続して行なうということが非常に難しいことです。
覚えておくべきなのは、アンチエイジングのポイントは、特定の栄養素(糖質など)を徹底的に避けるなど、何か苦行をして成し遂げたり、若くいるために何かを犠牲にするといったことではないということです。誰でも簡単に今日今すぐ始められる、心身ともに健康でいられることを目指すものだということです。
アンチエイジングのための医療機関・クリニックでの治療
アンチエイジングのために医療機関やクリニック・美容皮膚科などでできる治療には様々な種類があります。お悩みのある部位や症状の度合いによって、自分に合うものを検討するのが良いでしょう。
注意点として、アンチエイジングのための医療はそのほとんどが自由診療となり、医療機関・クリニックごとに料金が異なります。高価な治療を検討している時には、後悔することのないよう、いくつかの医療機関・クリニックを比較して、カウンセリングなどを受け、治療期間やダウンタイム・リスクなどを含めて納得したうえで受診することをおすすめします。
気を付けたい!
間違ったアンチエイジング法
アンチエイジングに効果が期待できるセルフケアや、医療機関・クリニックでできるアンチエイジング治療についてご紹介しました。しかし、巷で良いとされているアンチエイジング法の中にも、医学的な根拠がなかったり、間違った捉え方が広まっているものが存在しますので、注意が必要です。
間違ったアンチエイジング法①
糖質制限
糖質を一切摂らない、というのは間違った美容法だといえます。
食事は、三大栄養素である糖質・脂質・タンパク質のすべてをバランスよく摂ることが大事です。食事の量を制限するのであれば、この栄養素のうちのどれか一つだけでなく、三大栄養素のバランスを守って制限することを心がけましょう。
確かに糖の過剰な摂取は肌の糖化を招きます。しかし、だからといって糖を毒のように考えて、目の敵にする必要はありません。
AGEs(最終糖化産物)には細胞毒性があり、老化を早めてしまうということは事実です。しかし、“糖そのものが老化を早める”というエビデンスは一切ないのです。「糖はAGEsを作る=AGEsには毒性がある」ということは真実ですが、だからといって“糖には毒性がある”ということにはならないのです。
糖は=(イコール)毒、という考え方はやめて、三大栄養素である糖質・脂質・タンパク質をバランスよく摂ることを心がけましょう。
肌の糖化について
間違ったアンチエイジング法②
化粧品に過度な期待をする(肌トラブルが起きても使い続ける)
日常的に洗顔やクレンジングをし、その後基礎化粧品などで保湿をされている方がほとんどだと思います。化粧水・乳液や美容液などの化粧品は、保湿のためには良いものですが、その前提条件としてバリア機能が正常に働いているときに使うものであり、逆に言うと、バリア機能が正常なお肌でないとその効果が発揮されない、ということを知っておかなければなりません。
もし、肌のバリア機能が破壊されているところに化粧品を使い、ヒリヒリしたり違和感があったとします。しかし、化粧品の効果を信じている人は「ヒリヒリするけど、高価な化粧品だから大丈夫」「これは良くなる兆候なのでは?」と、使い続けてしまいがちなのです。
考えてみてほしいのは、例えばですが、転んでできた傷口に、化粧水や乳液を塗りこむか?ということです。
肌トラブルが起きている時には、同じ化粧品を使い続けるのは一旦やめて、皮膚を安静に保つべきです。高いお金を払ったから、とか、多くの人が良かったと言っているから…といって、過度な期待を持って使い続けることは避けるべきでしょう。
間違ったアンチエイジング法③
効果にエビデンスのない“若返りサプリメント”
とある物質が『サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)』を活性化させる、という事実が話題となり、その物質を点滴したり、錠剤などにしたサプリメントが流通されているといいます。
確かに、“その物質がサーチュイン遺伝子を活性化させる”ということは事実です。
だからといって、「その物質を体内に取り込んだらアンチエイジング効果が見込める」というのは、間違っていると言えるでしょう。
なぜならば、この事実は限られた限定的な環境での実験結果であり、人体へ投与した場合のエビデンスがないからです。限定的な実験で得たデータを、エビデンスがない状態で人体へ転用してしまっているということです。話題になったからといって、果たしてそれが本当に良いものなのか、効果が見込める価値があるものかどうかはよく検討する必要があるでしょう。
肌再生の専門家が教える
アンチエイジングについてのQ&A
アンチエイジングに関してよく聞かれる様々な疑問について、肌再生の専門家である北條元治医師に答えていただきました。このQ&Aは随時追加予定ですので、ぜひご参考にしてください。
アンチエイジングにおすすめのサプリメントは?
サプリメントというものは、様々な種類・成分を含むものが流通しています。
私たちの身体に必要な“三大栄養素”…糖質、タンパク質、脂質が欠乏すると、当然皮膚がカサカサになり、美容にも良くありません。
タンパク質を摂取すると健康状態が良くなり、お肌の色艶がよくなるようなことも分かっています。
しかし、サプリメントというものは、基本的には「何かが欠乏した時に、それを補充する」という考え方で使うのがよいでしょう。
極端な例えですが、元々食が細く多忙で、1日にほとんど食事ができない…という人には、プロテインでタンパク質を補給するのがおすすめできます。タンパク質は比較的不足しがちで接種しづらいため、先ほど挙げたような極端に乏しい食生活でない方にも、おすすめはできると言えます。
次に、マルチビタミンなどのサプリメントも摂って悪いことはありません。美容のため、と考えるというよりも、体のこと・健康のためと考えて、様々な栄養素を摂るのが良いでしょう。
お肌のアンチエイジングのために良い食べ物・悪い食べ物ってあるの?
美容に良い食べ物として、例えばコラーゲンを摂ると良い、とか、水分をとにかく沢山飲むのがいい、など様々なアドバイスを見かけることがあります。実際のところ、「肌に良い」とか「悪い」と言い切れる特定の食べ物というのはありません。
確かに、コラーゲンというものはアミノ酸の塊ですので、私たちの身体を構成しているタンパク質の原料として体内に摂取するのが良いというのはうなずけます。しかし、高価なコラーゲンのサプリメントを飲むのであれば、もつ鍋やすっぽん料理など、コラーゲンが豊富に含まれている料理を美味しく食べることをおすすめします。
人の身体の表面に、例えばコラーゲンなど含まれた化粧品を塗っても体内に浸透するということはありません。そして「コラーゲンが含まれた食品を食べたら、次の日お肌がプルプルになる」などということも、実はないのです。
口から入った栄養素は、必ず消化管でバラバラに分解されます。コラーゲンを食べたから、そのコラーゲンがそのまま皮膚に行く…というわけではないのです。